愛知県立芸術大学 大学案内2017-2018
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043卒業後の進路[就職等] 浜松市楽器博物館、北九州市芸術文化振興財団音楽事業課、豊田市文化振興財団、愛知県文化振興事業団、長久手市文化の家、愛知室内オーケストラ事務局、しらかわホール、ヤマハ音楽振興会、新国立劇場運営財団、豊橋市役所、トヨタ紡織、秀英予備校 等[教 員] ノース・カロライナ大学グリーンスボロ校、愛知県立芸術大学(非常勤講師)、名古屋大学(非常勤講師)、名古屋市立の中学校および高等学校、愛知県の私立高校、東京都立特別支援学校 等[進 学] 愛知県立芸術大学大学院、国内外の大学院 等[留学等] フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディ音楽演劇大学ライプツィヒ、カリフォルニア州立大学ノースリッジ校、コロンビア大学大学院、イーストマン音楽院大学院、ロンドン大学大学院、モンペリエ大学大学院、プラハ音楽院、オスロ大学大学院松岡裕子 私が音楽学に興味を持ったのは、井上さつき先生の講義を受けたのがきっかけです。「音楽史概説」は概説とはいえ、当時声楽を専攻していた私にとって、奥深く興味深い内容ばかりでした。井上先生の話は、まるでその時代にタイムスリップしたような感覚でリアルに迫ってくるのです。私は音楽に触れるたびに「もっと深く知りたい!」と思うようになり、大学院では音楽学を専攻しました。 音楽学は数々の資料を元に音楽を客観的に捉え、言葉で表現していく学問です。音楽学の研究によってこれまで知られていなかった事が解明され、様々な音楽がより身近に楽しめるようになってきました。私は研究する楽しさと、その内容をまとめる面白さ、そしてそれらを他者に伝える喜びを知りました。 今私は高校教師をしています。授業では様々な分野を教えます。表現の分野では歌唱・器楽・作曲を、鑑賞では西洋音楽のみでなく、日本音楽や民族音楽まで幅広く扱います。最近では「言語活動の充実」が授業に求められており、音楽学で学んだことが指導に活かされています。また、プログラムノートを書いたり、コンサートに出演する機会もあり、とても充実した毎日を送っています。 私も誰かの「もっと深く知りたい!」という気持ちを呼び起こすことができる、そんな影響力のある存在でありたいと思っています。活躍する卒業生村瀬 香 私は学部ではピアノを専攻していましたが、もっと広い視野で音楽を学びたいと感じ、大学院は音楽学を専攻して、ショパンの作品研究をしました。 大学院在学中、偶然出会った音楽療法の現場で、音楽によってクライエントの不安が和らぎ、他者との絆を深め、人生を肯定的に回想する様子を目の当たりにして、直感的に「この仕事がやりたい」と感じ、迷いなく音楽療法の道へ足を踏み入れました。幸運にもすぐに現場に恵まれ、実践の中で学ぶことからスタートし、講習会や学会発表など研鑽を積み、日本音楽療法学会認定の音楽療法士となりました。現在は、老人保健施設、ホスピス、作業所などで音楽療法を実践しています。また平成27年度から、母校である愛知県立芸大で、音楽療法の講義を行っています。 音楽療法では、音楽が治療のツールとして使われます。クライエントのニーズを瞬間的に判断し、音楽で働きかけるのですが、学生時代に学んだすべてが財産となっています。クライエントの嗜好は、クラシックは少数派で、童謡、歌謡曲、讃美歌など多岐に渡ります。音楽学では西洋音楽に限らず、幅広いジャンルを学んだおかげで、音楽的な引出しを多く持つことができました。また、学会で事例発表を行う際には、ゼミで日常的に研究のプレゼンテーションをしていたことが大変役に立っています。 音楽には人の心に訴える確かな力があります。大観衆を歓喜させることはできないけれど、目の前の患者さんに音楽で寄り添えることに、私は幸せを感じています。七條 めぐみ 2012年の夏、パリ=ソルボンヌ大学のマルク・バティエ先生が愛知芸大にお越しになった際、言いました。「私たちの間には学術協定があるから、コチュテルができて二つの学位が取れますよ。やってみますか?」私は何のことかよく分からないまま、ただ「留学ができる!」という思いだけで「Oui(はい)」と答えていました。それが、すべての始まり…。「コチュテル(博士論文共同指導)」とは、二つの大学に在籍しながら博士論文を仕上げるダブルディグリー・プログラムで、一つの論文で二つの博士号を取得することができます。ただしその分、二つの言語で論文を書かねばならなかったり、両大学の審査規定を満たさなければならなかったりと、大変な面も多々あります。さらに、論文を完成させるための資料調査や分析、考察の難しさも相まって、博士後期課程入学から学位取得までは5年の月日を要しました。途中、何度かコチュテルや博士論文そのものをあきらめてしまおうかと思ったこともありますが、指導教授の井上さつき先生、ラファエル・ルグラン先生をはじめとする様々な方の励ましやお叱りのおかげで、目標を達成することができました。 2017年1月24日に愛知芸大で行われた学位審査会には、日本側の審査員の他にフランス、オランダから審査員が来日され、アカデミックかつ暖かい雰囲気の中で行われました。この経験を生かして、引き続き広い視野で研究を進めていくと同時に、コチュテルのようなダブルディグリー・プログラムがもっと浸透するよう尽力したいと思います。音楽学コースウェブサイトに、七條めぐみさんの「留学報告」および、次の5名の「卒業生インタビュー」が掲載されています。籾山陽子さん 2013年 博士後期課程(音楽学)修了松宮圭太さん 2004年 作曲専攻音楽学コース卒業大野悠子さん 2009年 修士課程(音楽学領域)修了大西たまきさん 1997年 修士課程(音楽学)修了)大戸薫さん 2002年 修士課程(音楽学)修了* 音楽学コースウェブサイトに、「卒業生インタビュー」と「留学生からの報告」が掲載されています。2017年1月24日、本学で行われたコチュテルの学位審査を終えて。(左から)ラッシュ名誉教授(オランダ、ユトレヒト大学)、ルグラン教授(フランス、ソルボンヌ大学)、七條めぐみさん、井上教授、石井明教授(慶應義塾大学)、樋口隆一名誉教授(明治学院大学)

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