秋田県立大学 大学案内 2021
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てから土壌で分解されやすいプラスチックの研究を進めてきましたが、昨年度からは、海でも分解されるプラスチックの開発も視野に入れ、生分解性プラスチックに様々な植物由来の材料を混ぜ合わせる実験をしています。 そこで着目したのが、稲わらです。秋田県では毎年、膨大な量の稲わらが排出されており、せっかくならそれを利用できないかと考えました。調べてみると、稲わらは鉄鋼にも匹敵するほどの強靭さと、土壌や海水に分解しやすいという性質を兼ね揃えていることが分かりました。これを生分解性プラスチックに配合し、土壌や海水などの環境下で分解するスピードなどを調べています。 実験では、配合する稲わらの量を少しずつ調整して分解するスピードを調べます。稲わらを配合した生分解性プラスチックを日本の工業規格で決められているテストピースに成型し、海水や蒸留水を入れた試験管に浸しておきます。表面から少しずつ分解されていくので、サンプルが変色してきたら分解されてきた証拠。2週間で溶けたり、100日経ってもほんの少ししか変色していなかったり…様々なデータを集めている最中です。 学生たちとの実験は、和気あいあいとした雰囲気。全員が稲わらの配合を研究しているわけではなく、それぞれが興味のある素材を追求しています。やりがいを感じるのは、やはり成功したとき、それに尽きます。一方で上手く行かないことも多いのが実験。例えば、プラスチックは主成分が油、稲わらは植物なので水。油と水なので相性が悪いんです。そのため、お互いが溶け合わず、強く引っ張ると、き裂が入って壊れやすくなるというデメリットがあります。稲わらとプラスチックをどう融合させていくか、それは今後の課題となるでしょう。また、生分解性プラスチックは高価なので、日常で使うものとしてはまだまだハードルが高いというのも難点です。 研究室ではこれまでに、稲わら生分解性プラスチック複合材で容器やペグなどを試作しました。将来的には、プラスチック製品の多くを占める容器包装材を作り出せるまで技術を上げることが目標です。海で分解するプラスチックの研究を始めたのは昨年度に入ってから。まだまだスタート段階です。まずは稲わらと生分解性プラスチックの成分をコントロールできるようになることを目標に、製品として世の中に出せる未来が少しでも早く来るよう研究に精を出していきます。目指すのは稲わら配合の容器包装材日常で使われる製品を世に送り出す5Akita Prefectural University 2021

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