群馬大学医学部 入学案内2018
6/44

4り組むべき」という意見が出てきたんです。Patient First、こう言うんですね。良いことを言います。貴重な意見だと思いました。もう一つ素晴らしいと思ったのは「お互いの立場に関わらず対等にモノが言える雰囲気をチーム内で作って行かなければならない」という意見。これも非常に大切なことですね。かつては、医師の言うことに口を出すのがはばかられる時代がありましたが、これからはそういう時代ではありません。それぞれの職種から対等にモノを言うという雰囲気作りが大事です。学生たちはしっかり考えている、と感心しました。村上 雰囲気というのはとても大切です。私も同じ講義を担当していますが、以前は「医者にモノを言える看護師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士になれ」という言い方をしていたのですが、それではダメなんですね。そこで今は「医者にモノを言う医療職になれ」と言い方を変えました。今の保健学科の学生は優秀です。医師の間違いを指摘・修正できる「言える能力」を持って卒業しているんです。でも現場では、言えるけど言わない。医療スタッフがものすごい能力を持っているけれど、言わない、言えないという環境がまだまだあるのです。そのことが医療事故につながりかねませんから、「言える」でなく「言う」医療職にならないといけない、と学生たちには伝えています。そういう意味でも、医学科と保健学科の学生が日常的に交流できる本学の環境は、素晴らしいと思いますね。すでに「言う」環境を学生のうちから築き始めているわけですから。石崎 サークル活動も医学部○○部、というように文化部も運動部も一緒に活動していますから、連携を深めやすいですね。私はオーケストラの顧問をしているのですが、両学科の学生が同じ目標に向かって一生懸命活動をしている様子がよく分かります。オーケストラで美しい音を作り出すためには、個々の技量が優れているだけではダメで、他のメンバーの出す音に耳を澄ませ、それに合わせて演奏することが大切です。医療の現場も全く同じだと思います。このように講義のみならず、部活動のレベルからお互いに交流することは、将来的に良い医療チームを構成することにつながると思いますね。医療安全にチームワークは不可欠医療安全のために群大で日本初の試み村上 学生に医療安全の大切さを説く上で、イギリスで起こった2つの有名な事件を例に挙げています。そのひとつは、ハロルド・フレドリック・シップマン事件です。英国の医師は2000年に、218名の患者を麻薬を用い殺害したとして、終身刑が言い渡されました。この病院では、複数の医師、看護師、薬剤師、理学療法士、診療所職員などがともに働いていましたが、誰も彼の犯罪に気づいていませんでした。 もうひとつは、ヴィクトリア・クリンビー事件です。2000年に8歳の少女ヴィクトリアが救急搬送された病院で、低体温と低栄養で死亡しました。この少女が虐待を受けていたことは、地域の医師、救急病院、小児保健センター、保健師、ソーシャルワーカー、そして近所に住む住民も知っていましたが、情報は共有されず、ヴィクトリアは死亡しました。医療現場と地域社会との違いはありますが、両事件とも情報を共有化しなかったために起きた、あってはならない事故でした。これを機にイギリスの病院のチーム医療体制や医療安全対策、および児童虐待防止システムや法律が大きく変わりました。この2つの事件から、情報の共有、つまりチーム医療ができていないと医療安全がないがしろにされるということがわかります。繰り返しますが、医療安全の基本はチーム医療です。学生には、このことを肝に銘じてほしいので、1年次の早い段階から学生には話しています。石崎 情報の共有化ですね。情報が共有化されていないと、何が重要なのか? 何を最も優先すべきなのか? がスタッフの中で分からなくなってしまうんですね。最初にもお話ししましたが、今年4月、大学院の医学系研究科の中に「医療の質・安全学講座」を設けました。本格的に医療のGunma University Faculty of Medicine医療安全と多職種連携

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る