群馬大学医学部 入学案内2018
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5質を高めるにはどうしたらいいのか? 患者さんの安全を担保するにはどうしたらいいか? などを考え、研究して、病院の医療の質と安全を管理する部署がありますから、そこと連携して質の良い医療を提供していこうということを始めたところです。これは日本で初めての試みと言ってもいいと思います。今までも、医学科では医療安全の講義をやっていたのですが、系統立てて教育するという点では不足な点がありました。今回、系統的に教えていこうということで、学部生にも低学年のときから医療の質と安全の知識を教えて、大学院につなげます。当然のことながら、この講座による教育でも多職種連携及び情報の管理と共有化がキーワードになると思います。村上 保健学科でも共同してやろうということになっています。今年度から大学院では、医療倫理に関する講義を医学系研究科と保健学研究科で共通の講義として実施しています。今までは、大学院レベルでの共通の講義というのはなかったんですね。それだけ大切だということです。アウトカムに向かって自ら学びチーム医療を推進できる医療人を石崎 医学科は2016年9月にアウトカムを策定しました。アウトカムとは「卒業時に目指すべき学生像」のこと。医学科のアウトカムは「医学・医療が自然科学の上に成り立ち、かつ社会の中で人を対象として行われるものであることを理解し、科学的知Science、倫理Ethics、技能Skillの3つの面にわたって生涯自己研鑚を続けることができる学生」です。卒業時までに、自己省察力、知識の獲得と知識を応用する力、コミュニケーション能力、チーム医療の中で協働する力、基本的な総合診療能力、地域医療の向上に貢献する能力、医学研究を遂行する能力、自己研鑚という8つの能力(コンピテンシー)を身につけなければなりません。医学科では、多様な講義・実習を提供して、皆さんがこれらの能力を身につけるお手伝いしますが、それだけでは十分とはいえません。学生さん自身が医学科で何を身につけ、どんな医師を目指すのかを常に真摯に考え続けてほしいですし、そういう学生さんであってほしいと思います。このことを記したカードを、すべての学生と教職員に渡しています。村上 保健学科では、「高度専門医療人」と「チーム医療ができる医療人」を育てることを目標にしています。ディプロマポリシー(学位授与の方針や育成する人材に修得を期待する能力)として、1.保健医療の中核を担う専門職業人となるために必要な知識と技術を備え、人間の尊厳を尊ぶ心を持つ人、2.保健医療の担い手として、将来に向け自らを向上させてゆく意欲と自己開発力を持つ人 3.チーム医療を担う自覚を持ち、関係する人々との相互理解と円滑な協働関係が築ける人、4.保健医療の諸課題に対して多面的視点からの柔軟な思考、的確な判断と対応ができる人、という4つを挙げています。また、先ほども申しましたとおり、保健学は新しい学問分野ですから、教育者や研究者が医学に比べて少ないという現状があります。本学科では、「高度専門医療人」を育てるのが第一目標ではありますが、その一方で「保健学の教育者・研究者」を育てることも目標としています。教員一丸となって、しっかりとした国際的研究業績を上げ、その研究力を基盤に大学院教育に当たっています。そこで、学部学生の大学院への進学を推奨して、教育者・研究者として活躍する人材の育成を進めています。石崎 繰り返しになりますが、理想的な医療人というと、やはり患者さんファーストと考えられる人。疾患だけではなく患者さんの全体を考えるような医療人が「よい医療人」といえると思います。村上 知識や技術は大切ですが、患者さんの気持ちになれない医療人はダメですね。「患者さんの気持ちがわかる医療人」を育てるために大事なのは、やはりチームワーク医療教育だと思います。医師、看護師、理学療法士、作業療法士、それぞれ患者さんに対する考えが違う中で、患者さんにとって最善の道筋を見つけ、実現するためにもチームワーク医療教育は重要だと思います。安全を含め、より良い医療を進める上ですべての基本になるのがチームワーク、多職種の連携なのです。対 談石崎 泰樹 医学科長×村上 博和 保健学科長

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