群馬大学理工学部・大学院理工学府 案内 2018
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●水素エネルギー社会を目指す 環境にかける負荷を極力低減しながら、私たちの生活の質を維持していくこと、これが私たちに課せられた大きな課題です。そのためには、生活を支えているエネルギーをクリーンな水素より取り出し利用する社会、つまり水素社会の構築が望まれ、そこでは「水素をつくる技術」、「水素をためる技術」そして「水素をつかう技術」の開拓が必要とされています。群馬大学では、これらをカーボン材料で行うための研究を行っています。 「水素をつくる技術」の中心に燃料電池があります。燃料電池は水素と酸素を利用した次世代の発電システムです。乾電池などの使い切りの電池(一次電池)や、携帯電話やデジタルカメラのバッテリーのように充電して繰り返し使う電池(二次電池)とは異なり、燃料電池は燃料となる水素を供給し続けると、半永久的に電気を作りつづける発電装置なのです。今後、電気自動車や家庭用の電力源としての「燃料電池」に大きな期待が寄せられています。●白金に代わり、安価で豊富な資源 「カーボン」が燃料電池の材料になる ところで、燃料電池が電気を作り出すための触媒として使われている主流が「白金」です。いわゆるレアメタルの一種で南アフリカとロシアが主な原産地ですが、埋蔵量に限りがあること、もともとが高価なうえに政治情勢などによっては価格の変動があることなどから、燃料電池の普及の大きな足かせになっているのです。 そこで着目したのが「カーボン(炭素)」です。自然界に無尽蔵に存在する炭素原子を使うカーボンならば資源枯渇の心配も無用なうえ、コスト面でも大幅な削減が可能になるのです。群馬大学では60年もの間カーボン材料の研究が行われてきました。そうした研究の積み重ねの上に立ち、今回、カーボンアロイというカーボン材料が群馬大学において開発されました。カーボンアロイは、たとえば、高分子と金属の混合物を炭素化することで作ることができ、燃料電池反応のひとつである酸素還元反応に対して高い活性を示します。そのため白金に代わる触媒として期待され、実用化に向けて企業との共同研究も始まっています。カーボン(炭素)材料を用いて、低炭素社会の実現を目指す! 本プロジェクトは理工学部におけるユニークな異分野融合研究として、文部科学省特別経費事業「大学の特性を活かした多様な学術研究の機能の充実」の支援を受けてきました。エレメントという言葉は「元素」と「要素」という2つの意味を持ちます。本プロジェクトでは「炭素」・「ケイ素」という2大元素の特性を研究し、さらにこれらを要素として組み合わせてイノベーションに繋げることを目標としてきました。これまでにケイ素を結合した強力な蛍光剤や、これを活用した「蛍光性コレステロールプローブ」が実用化され、さらに、革新的な炭素触媒の開発とこれを活用した燃料電池の実用化も見込まれています。 プロジェクトには多くの学生も参加し、約240の論文、40以上の特許出願・取得の成果を挙げてきました。本プロジェクトは平成27年度にひとまず終了しましたが、現在は「群馬大学元素科学国際教育研究センター」を中心に、活動を続けています。 以下ではプロジェクトの研究例の一部をご紹介します。分野融合型プロジェクトエレメント・イノベーション~各分野を融合し未来材料・技術を創り出す~ナノシェルカーボン 群馬大学独自の発明であり、燃料電池に使われるプラチナなどのレアメタルと置き換えることが可能なカーボンアロイ触媒(ナノシェルカーボン)の高機能化を進めています。蛍光応答で遺伝子変異を検出変異無し変異有り ケイ素を結合した蛍光剤を開発し、遺伝子突然変異が存在する時だけ光る遺伝子診断用蛍光プローブの研究を行っています。ケイ素導入遺伝子検出プローブ

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