群馬大学大学院 教育学研究科案内 2019
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 あいさつ 群馬大学の教育学研究科は、大学を卒業してこれから教師になろうという人がさらに学びを深める場であり、同時に現在教師の職にある人が力量を高めるためにさらに学ぶ場でもあります。では、教師になるための学びと教師が力量を高めるための学びとが大学院で行われる意味は、どこにあるのでしょうか。 「教育」ということばを訓読みすると、「教え育てる」となります。そうすると、「教師」とは子どもを教え育てる先生、「教室」とは先生が子どもを教え育てる部屋、ということになりそうです。つまり「教師が教え、子どもが学ぶ」。果たしてそうなのでしょうか。 「教師が教え、子どもが学ぶ」というのは一方通行の教育観といえるでしょう。現在では乗り越えられつつある教育観ですね。ここには、「教師の学び」という視点が欠けてます。教育とは双方向の営みです。教師と子どものやりとりがあるのはもちろんですが、そのやりとりを通じて教師も子どもから学びます。子どもから学ぶという姿勢をもった教師には、子どもはきっと多くのことを教えてくれるでしょう。 あるいは、教育は多方向の営みだといった方がいいかもしれません。子ども相互の学び合いもあるからです。教室を、子どもたちと教師の多方向の学び合いの場として組織する。教師の力量が問われる場面です。 教師は、子どもから学び、同僚からも学びます。学校現場は、教師にとって重要な学びの場です。これに加えて、外からの視点をもつことも有効です。自らの実践を、現場を離れたところから見つめ直すのです。そのような場として大学院があります。現場での実践から生じた課題を解決するために大学院で学び、大学院での学びを現場に持ち帰って実践に移す。その繰り返しが教師の力量を向上させます。大学を卒業して教職に就いた時点で教師として「完成」するわけではありません。大学院は、教師の生涯学習を支援します。 このような実践的指導力を高める場としての大学院は、これから教師になろうという人にも有益な学びの機会を提供します。職業生活を通して学び続けるという教師の学びのスタイルを、教職につく前から身につけるのです。たとえば教科の学びにしても、大学院では単に詳しく学ぶだけではありません。深く学ぶことでその教科の各単元のエッセンスをつかみ、そこから授業を構築します。授業をつくるには、学校現場を、そして子どもたちをよく知る必要があります。また、つくった授業を実践した上で大学院において授業実践の省察をするという過程を経てこそ、授業力が高まります。だから、大学院のカリキュラムには、学校現場と大学院とを行き来しながらの学びが組み込まれています。 教育についての知、人間についての知、さまざまな教科についての知。教育学研究科では、これらを実践という観点から有機的に結びつけることで、ひとりひとりが教師としての力量を高めます。どうぞそのために、本研究科を活用してください。私たち研究科教員も、みなさんとの学び合いを楽しみにしています。                      群馬大学大学院教育学研究科長 齋藤 周

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