神戸大学大学院 経済学研究科 経済学部 2018
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経済学とは −様々な角度からアプローチ可能な,懐の広い学問−胡 云芳 教授 私の専門は労働経済学です。働くことは,それによって生活の糧を得る私達一人ひとりにとってのみならず,国レベルでみても大きな関心事です。なぜ人々の間に収入の格差があるのか,なぜ仕事につけない人がいるのか,技術の進歩は人間の労働に対してどのような影響を与えるのかといった根本的な問いに答えるためには,労働サービスの取引を行う個人や企業の行動原理と,取引の過程や結果を説明する「経済学の論理」を学ぶことが極めて重要です。また,経済学の論理は,こうした問題に対する処方箋,つまり政策の有効性や副作用の存在などを考える際にも有用なツールとなります。経済学は「人間研究の学」と言われます。経済学部の学びを通じて,人間の活動がもたらす様々な社会経済的な問題を見る目を養うとともに,その解決策にも考えを巡らせて下さい。人間の活動を経済学の論理で考えてみよう勇上 和史 准教授 私は国際貿易と経済成長に関する研究を行っています。世界経済が一体化しつつある中,より広い視野から,短期・長期両方の時間のスパンで日本経済の問題を考えなければなりません。日本企業が世界市場で勝つにはどんなものを作るべきか,限られた人的物的資源を異なった生産部門間でどのように配置すべきか,これらは世界経済の変化を考慮に入れながら政府の政策の妥当性を理解するために重要です。この点を理解するには国際貿易論における貿易パターン,貿易利益などの知識が必要になります。また,経済政策の効果をより正しくとらえるためには経済成長のメカニズムを理解する必要があります。「国際貿易はいいことか」,「消費税の増税は悪いことか」など身近な問題について経済学を一緒に勉強してその答えを探しましょう。世界の中の日本経済事情を考えよう国際経済学・マクロ経済学六甲台一口メモ l 経済学部の精神:「真摯・自由・協同」02労働経済学 経済学と一口に言いますが,そのきちんとした定義を与えることは実は簡単ではありません。様々な学者が様々なことを言っていますし,「経済学とは,経済学者がやっていることである」などというジョークも聞かれるくらいです。 定義が難しい理由のヒントになるのが,今日の経済学に大きな足跡を残したケインズの言葉です。「経済学の大家はもろもろの資質のまれなる組み合わせを所持していなければならない。…彼はある程度まで数学者で,歴史家で,政治家で,哲学者でもなければならない。」なるほど,経済学者は色々な別の顔を持っていなければいけないようです。そして,どの顔がより大事かについては研究者間でも意見が分かれるでしょうから,結果として皆が納得のいくような定義に到達しにくいのでしょう。 そう聞くと,皆さんは経済学をやるには他のことをたくさんやらなければならないと思って,尻込みするかもしれません。しかし上のケインズの言葉は,経済学の世界とはややかけ離れて見えるような学問分野の知識も,実は経済学の勉強に役に立つという風にも読むことができます。とりわけ,今まで皆さんが好きだった分野・科目の知識が,経済学の理解を助けることになるかもしれないのです。例えば歴史が好きな人は,過去に起きた経済的発展の理解を通じて現状を読み解こうとするアプローチに共感を覚えるでしょう。また,数学を知っていると,人々は数学の問題を解くがごとく消費などもろもろの行動計画を立てていく,という数理的なアプローチが頭に入りやすくなります。そんな具合です。経済学は,様々なアプローチが切磋琢磨しながら共存している分野です。だから皆さんは,その中で自分に合ったものを選べばよいのです。経済学自体は一つの険しい山に例えていいかもしれませんが,ならばその裾野は意外に広いというべきです。どうか皆さんには,自分なりのやり方で,大学在学中をかけて登る価値のあるこの山に挑んでほしいと思います。

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