熊本大学 理学部 2024
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ガラス中でのイオン伝導のモデル走査プローブ顕微鏡システム物理特性測定装置フェムト秒光増幅器レーザーシステムダイヤモンドアンビルセル高圧発生装置データ物性物理学 当研究室では、物性に関する実験及び理論計算によって得られたデータに対し、多変量解析や機械学習手法を駆使して、データの背後にある秩序を見つける研究を行っています。複雑で解釈が困難な現象に対しても、様々な視点から蓄積されたデータの活用と近年の目覚ましい計算手法の発展及び計算機性能の向上の恩恵を受けて、糸口を掴むことができるようになってきています。構造不規則系物質科学 超イオン導電体、ガラス、液体、アモルファス半導体などの構造的に乱れた物質は、 工業材料や機能性材料として幅広く応用され、また今後の新しい応用が模索されています。しかしながら、これらの物質が示す性質の、原子レベルからのミクロな起源については、まだわからないことが山ほどあります。また、これらの物質の性質を統一的に理解するための物理学の枠組みはまだありません。当研究室では、構造的に乱れた系におけるイオン輸送現象、光誘起現象、熱力学的性質などを、 物理学の基本法則に基づいた理論的な手法を用いて調べています。ナノスケール物性科学 パソコンやスマートフォンの小型化や高機能化は、とても小さなスケールの物理現象を人類が制御できるようになったことにより実現されたものです。微細加工技術により作製したナノ構造や原子レベルに薄いナノシートにおける伝導現象を調べる事により、 未来の電子機器につながる基礎研究を行っています。また、走査プローブ顕微鏡などを使って、 物質表面を原子レベルで細かく観察する事により、 ナノスケールにおける様々な現象を解明することに取り組んでいます。低温物理学 20世紀に発展した量子力学は、 原子や電子のミクロの世界を記述するのに不可欠なものとなっています。特に、 超伝導は物質中の電子や格子の量子性の影響を強く受けた現象で、 MRI(磁気共鳴画像法)、 SQUID(超伝導量子干渉計)、 リニアモーターカーなどさまざまなものへ応用されています。超伝導の基礎特性を詳細に調べることにより、新しい現象の発見を目指しています。光物性物理学 「光を使って物質の可能性を探り、 未来を拓く研究を」をモットーにフェムト秒超短パルスレーザー、ナノ秒高強度パルスレーザー等や、ー270℃程度の極低温環境を利用して、物質の示す新現象や新しい機能性材料や新規半導体を探す研究を行っています。高度なエレクトロニクス技術を用いても観測が困難な物質内の超高速現象を、レーザー光の干渉性等をうまく利用し、10兆分の1秒の時間精度でそれらの現象を捕まえ、物理現象の本質を解明することに取り組んでいます。高圧物性物理学 物質に圧力を加えると体積が減少し、密度や音速、磁性、電気抵抗、熱伝導など様々な物性が変化します。また、相転移とよばれる原子配列や物性の不連続な変化も生じます。当研究室では、主にダイヤモンドアンビルセル高圧発生装置を使って金属や酸化物に最大で数百万気圧という圧力を加え、高圧下での物性や原子の配列や振動状態、さらにそれらの相関を調べています。また、大気圧下では合成できない新規物質の探索や、実際に高圧環境下にある惑星内部の解明にも取り組んでいます。金属流体の物理 液体金属を、さらに気液共存線を迂回するように状態を変化させると、液体から気体へと密度を連続かつ大幅に低下させることができます。同時に、電気的性質も金属性から絶縁性へと変化します。物質中の原子の凝集状態と金属性との相関を明らかにするために、実験的研究を行っています。

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