熊本大学 理学部 2024
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阿蘇火口における火山ガス調査有明海で採集したイルカの汚染物質の分析物質変換と相間移動に基づく有機化合物の検出系 医農薬品や電子材料として有望な有機化合物の中には、鏡に写した像が元の像と重ならない、いわゆる“右手型と左手型”をもつものがあります。一般に、これら鏡像異性体の生理活性は全くと言っていいほど違っています。自然界では、酵素の働きによって一方の鏡像異性体のみが効率良く生産されていますが、残念ながらその量はごく僅かしかありません。そこで、化学の出番です。望みの鏡像異性体のみを自在に合成する「不斉合成反応」を開発するために、酵素の営みを規範として、優れた触媒機能を示すユニークなキラル金属錯体や有機小分子の創製を目指しています。触媒的不斉合成反応の開発自由な発想で魅力的な分子を創り出す 有機合成化学は構成原子と共有結合の組み合わせで多様な分子を創り出すことができます。しかしながら、新しい分子を生み出すためには、原子や結合の性質を理解して、それらを適切に配置しなければなりません。これまで見逃されていた原子や結合の性質・特性を発見することで独自の分子を設計、合成することができるようになります。特に原子や結合の配置と配座によって生じる反応性やキラリティーを高度に制御することで、新しい医薬品や機能性材料の開発に繋がる魅力的な分子を創り出すことができます。自然環境で繰り広げられるchemistryを探る 大気には様々な化学物質が存在し、地球環境に影響を与えています。その中には植物や海洋から放出されるものも多く、 大気中で反応したり相間移動をし たり複雑に絡み合っていま す。そこで私たちは、 新しい分析手法を開発しながら、自然起因の化学物質の挙動を探っています。山や海・湖などのフィ ールドは私たちのsecond laboratoryです。環境毒性化学 有害物質による海洋汚染は、 早急に解決すべき重要な問題です。ダイオキシン類や有機塩素化合物など、難分解で生物残留性の高い物質に加え、最近では医薬品や合成香料など、 日常生活に含まれる人工物質が新たな環境化学物質として注目されるようになりました。 こうした化学物質について、 水、 大気、 堆積物、 生物などあらゆる環境媒体を対象に化学分析を行い、 残留メカニズムや生物濃縮の態様を解明する研究を行っています。物質の相間移動に基づく分析化学の展開 化学物質の分析は、環境・バイオなど様々なサイエンスの基盤をなしています。測定対象物質を「気相から固相」、「液相から液相」のように相の間を移動させることで、分離や精製、検出を達成する手法を研究しています。有機化学分野分析化学分野

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