熊本大学 理学部 2024
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生存している細胞卵母細胞が緑色蛍光を発する遺伝子導入メダカ系統(エンハンサー トラップ系統)葉が運動するマメ科植物アレチヌスビトハギの葉の縦断切片(左上)およびCT画像(左下・右)メチル化DNA結合タンパク質MBD1のSUMO化はメチル化ヒストンH3とヘテクロマチンと蛋白質HP1の分子集合に重要な役割を果たします生きている化石ミドリシャミセンガイ(腕足動物)海底生態系を支える多様な微小動物性決定・性分化機構 性決定・性分化は、多くの生物の存続に不可欠な雄と雌を作り分けるシステムのことです。この生物が元来保有している基本的な分子機構を解明するべく、水温調節により性分化を制御できるヒラメと、遺伝学的解析が可能なメダカを用いて研究を行ってい ます。また私たちは、 試験管内で生殖細胞を増殖・分化させ、「試験管内で精子と卵をつくる」技術開発にも着手しています。今後、 この新たな発生工学システムが確立されれば、メダカ等の絶滅危惧種の再生に役立つのではないかと期待しています。細胞運命決定の制御機構 私たちヒトを含む多細胞動物では、発生過程においても生後においても細胞が生きるか、死ぬか、増殖するか、分化するかなどの運命を決定することで、 複雑な構造をもち高度な機能を果たす個体を形成、維持しています。私たちは、 細胞の運命がどのようにして決定されるかをマウス、ヒト細胞などを用いて分子、細胞、個体レベルで研究しています。本研究によって生命の成り立ちを理解するだけでなく、病気の治療に役立つことも期待されます。植物のデータサイエンス 植物の器官や個体レベルでの変形や運動は、細胞レベルでの協調的な形状変化が組織の配置に従って統合されることによって駆動されています。これらの変形や運動のメカニズムを理解するため、細胞から個体に至るマルチスケール解析を行い、階層を横断する3Dモデルの構築にも取り組んでいます。 分子修飾と細胞機能・エピジェネティクス制御 高等生物に見られるほぼ全ての生命現象は、核酸やタンパク質の分子修飾を基礎としたエピジェネティックなシステムの制御下にあります。私たちは、 動物細胞の核内・クロマチンを構成するタンパク質の翻訳後修飾のパターン形成とその認識が、細胞の増殖 ・ 分化をどのように制御するのかを明らかにしたいと考えています。特に、 ユビキチンファミリー SUMOとゲノムDNAやヒストン分子のメチル化修飾の連動と連係がクロマチン構造や細胞核内ドメイン、核膜孔の制御にどのような役割を果たすのかに興味を持って研究を推進しています。底生生物の繁殖・行動・群集生態 海岸 (干潟 ・ 岩礁・浅海) に生息する底生生物の繁殖・行動 ・群集生態を研究しています。生物のライフサイクルや行動がどのように環境に適応し、進化してきたかを知ることは、 重要で興味深いテーマです。一般にこれらの研究は基礎研究と位置づけられていますが、 研究成果は沿岸域の種多様性の保全や水産にも応用され、 地域に貢献しています。

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