京都大学 大学案内 2024
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高等数学の基礎を学びつつ最新の数学理論も探究する数学は、数、図形、数量の変化などの背後にある法則の解明をめざす学問であり、永年におよぶ時間をかけて、確固とした体系を築いてきました。その一方で、現在でも多くの新しい問題が数学の内部から、あるいは物理学、地球惑星科学、化学、生物科学などの他科学から続々と生じ、それらを解明するための新たな理論が創出されています。また、普遍的な性質をもつ数学は、自然科学はもちろん、情報科学や経済学など、多くの分野とも密につながっています。これらを背景に「数理科学系」では、20世紀前半までに確立した代数学、幾何学、解析学の基礎を広く学習するとともに、最新の数学理論も探求します。理論・実験・観測を並行しながら幅広い研究と教育を展開物理学は自然界の普遍的な法則を明らかにし、物質の種類や時間・空間・エネルギーのスケールのちがいによって生じる多様な現象を統一理解することをめざしています。これを前提に「物理科学系」は3教室に分かれています。第一教室では主に量子や物質、それらの集団を支配する物理法則を、第二教室では時空の基本構造から素粒子、原子核、重力、宇宙論までについて、宇宙物理学教室では太陽から最遠方銀河まで宇宙の多様なスケールの諸現象について、それぞれ理論、実験、観測等を並行しながら幅広い研究と教育を行っています。身近な疑問だけれど深遠で遙かな事象の教育・研究に挑む「地球惑星科学系」は私たちが生活する地球、その地球を取り巻く惑星間の空間、これらを研究対象としています。ターゲットは幅広く、雲の動きを引き起こす大気の流れ、大量の熱を蓄えている海の流れ、地震を起こし火山をつくる地球内部の変動、オーロラをもたらす太陽からの粒子と地球磁場、ヒマラヤをつくり南米とアフリカを引き裂いたマントルの流れ、ダイヤモンドをつくり出した高温・高圧の世界、35億年前の原核生物はいかなる変遷を経て現在のように多様化したのか、ほかの惑星に生物は存在したのか(するのか)などであり、誰もが抱く身近な疑問だけれど深遠で遙かな事象に関する教育・研究に取り組みます。自然界の理解をベースに有用な新物質の創造をめざす化学は原子・分子のレベルで物質の構造、性質、反応の本質を明らかにし、それに基づいて自然を理解しながら、有用な新物質の創造をめざす学問です。この「化学系」では原子、分子、生命から宇宙まで、自然界に存在するあらゆる物質を研究対象にしています。知的探求の場としては広大なフロンティアがあり、研究方法やスタイルも合成、分析、測定などの実験が主の分野から、理論と計算が主の分野まで、テーマ等によって大きく異なります。このように研究の対象や方法のバラエティが豊かなことも化学の大きな特徴であり、学生は個々の興味・関心や将来の目標にあわせて、自身に最適な研究分野を選べます。多様なアプローチと方法論を駆使し、生物と環境を統合的に理解する「生物科学系」の研究対象は、地球の多様な生物の存在様式や生命現象です。マクロ的な視点からは生態学や行動学、系統分類学、人類学、自然史、野外研究などに重点をおいた研究を展開し、生物の進化や多様性の機構を明らかにします。一方、さまざまな生物のゲノムが解読されたいま、ライフサイエンスはポストゲノム時代に入り、新しい研究の方向性が求められています。ミクロ的な視点からは動物や植物の細胞生物学、発生生物学、分子生物学、構造生物学、神経生物学の独創的な研究により、多彩な生命現象を分子レベルで解明します。このようにミクロ・マクロの両視点から多様な方法論を駆使し、生物を環境と合わせて統合的に理解することをめざします。数理科学系の講義風景3.8メートルせいめい望遠鏡(岡山県に設置)課題演習(3年次)で訪れた阿蘇山中岳第1火口での湯だまり観測化学系の実験風景野外実習(根子岳)28KYOTO UNIVERSITY GUIDE BOOK 20245学系の紹介数理科学系物理科学系地球惑星科学系化学系生物科学系

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