開 いてみよう学問の扉先輩が教える 京都大学の魅力就職9.3%進学88.1%工学部/大学院工学研究科有馬 誉 助教洛南高等学校 出身大学院工学研究科都市環境工学専攻環境デザイン工学講座2023年3月 工学部地球工学科環境工学コース 卒業米澤 璃穂 さん富山県 富山県立魚津高等学校 出身卒業生 京大工学部の卒業生の多くは、大学院の工学研究科に進学します。研究室の多くは桂キャンパス(P76)にあり、世界最先端の研究設備が揃っています。また、京大工学研究科は高校の教科でいう物理・化学に限定した分野だけでなく、環境にやさしくかつ災害につよい街づくりや建築、情報科学、デザインや医療・生命系との融合的な分野もあり、「工学」というイメージから想像できないほどの広い領域をカバーしています。こうして学部の時よりもさらに奥深く、幅広く学んだ大学院生は、修了後、大学や国内外の研究機関はもちろん、政府機関や国際行政機関、国内外の民間企業へ就職し、社会に大きく羽ばたいています。 受験生の皆さんにとっては、まずは大学入試の合格が大きな目標ですが、是非その先も見据えて「工学」を志してください。■概要 工学部では例年9割近くの学生が、学科の学びが直結する本学の工学研究科、エネルギー科学研究科、情報学研究科などの大学院(修士課程)に進学します。その後も博士課程に進み、大学等の研究・教育職をめざす者も少なくありませんが、専門分野と密に関連する企業などの求めに応え、研究・開発・技術職に就くという進路も広がっています。■取得可能な資格 在学中に所定の科目を修得することにより、測量士、建築士、電気主任技術者、無線従事者、危険物取扱者、ボイラー取扱主任者などの資格取得に向けた学科試験の全科目、または一部が免除されます(卒業後一定の実務期間を経ることで受験資格が得られる資格もあります)。2024年度 卒業生の状況その他2.6% 化学工学は、工場などの工業生産の場において、化学材料をいかに効率よく生産・活用できるかを考える学問です。実験室や研究室の机上で生まれた化学材料を社会に役立つ製品として展開するには、経済コストや安全性・環境への配慮など、多角的な視点で検討を重ねなければなりません。そこで、生産現場全体を俯瞰して、その現場にとっての最適な製造プロセスを考え、材料の開発・性能の向上に取り組んでいます。 私は、工場プロセスなどで発生したCO2をいかに効率よく処理できるかに着目しています。CO2の処理には、CO2の回収と、回収したCO2を別の物質に変換するという2つの段階があります。私が取り組むのは前者。材料内部に原子サイズの小さな細孔が多数空いた多孔質材料を研究対象としています。 細孔にCO2を吸着させ回収する仕組みですが、この材料を研究対象に決めたのは、材料の働きや吸着機構への基礎的な興味からでした。研究を進めるなかで、だれも知らなかったことをはじめて明らかにしたときは、もっとも湧き立つ瞬間ですが、大学進学時に工学部を選んだのは、社会に役立つ研究をしたいという一心から。解明した現象をどのように社会にいかせるのか、この視点は欠かさないように心がけています。 経験を積んで慣れてくると、失敗への対処方法も身について、それなりの成果を出せる自信がついてきます。でも、それでは飛び抜けた成果はなかなか生まれません。そんなとき、新たな扉を開くのは、〈常識〉にとらわれない学生たちの自由な発想です。予想しなかった選択をきっかけに、新しい現象に出会うことがあります。 工学部ならメーカー、経済学部なら銀行など、今の段階で想像できる進路だけが未来ではありません。たとえば、化学工学は、社会のさまざまな事象の最適化に関わる学問であり、組織を俯瞰して経営や運営を考えるときにも応用できることが魅力です。これから入学されるみなさんには、大学で、どういった能力を手にしたいかという視点で学部学科を選んでいってほしいと考えています。環境工学を中心に幅広く学べる京大を志望し、2025年に工学研究科都市環境工学専攻修了、現在は博士後期課程に在籍中です。学部から大学院まで、最先端の講義に加え、海外研修や企業実習、研究室での留学生との交流を通じて、自身の生き方に対する考えを深められる機会も多く、有意義な6年間でした。将来は得た知識や経験を活かし、行政か民間の立場から脱炭素社会の実現に貢献したいです。京大は、求めれば多種多様なチャンスを得られる場所です。好奇心あふれるみなさんの挑戦を応援しています。大学院工学研究科KYOTO UNIVERSITY GUIDE BOOK 202653学びを深めながら、自身の〈生き方〉への考えも深まる机上の学識を社会に展開する化学工学。学んだ知見を手に、社会に献身せよ大学院の紹介来たれ! 京大「工学」の大学院へ!!卒業後の進路
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