京都大学案内 2026
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開 いてみよう学問の扉先輩が教える 京都大学の魅力KYOTO UNIVERSITY GUIDE BOOK 2026 就職14.8%進学82.7%農学部/大学院農学研究科佐々木 努 教授成蹊高等学校 出身京都府職員2022年3月 大学院農学研究科地域環境科学専攻(修士)水環境工学分野 修了松村 寛子 さん京都府 京都市立堀川高等学校 出身天然由来分子精密構造解析システム(北部キャンパス機器分析拠点設備) 農学研究科は、農学、森林科学、応用生命科学、応用生物科学、地域環境科学、生物資源経済学、食品生物科学の7つの専攻、および附属教育研究施設(農場・牧場)から成り、自然科学、人文科学、社会科学の総合的な学問体系の観点から「生命・食料・環境」をキーワードに教員と学生が一体となり研究を進めています。女子学生・留学生が多数在籍し、ダイバーシティを受容する環境が整備されています。具体的な研究については、陸・海・空の生物圏および微生物から植物・動物に至る幅広い生物を研究対象として、最先端の機器等を用いて、「生命」の基本原理を明らかにし、良質な食料の安定的な生産や気候変動対策・再生可能エネルギーの導入等の「食料」・「環境」にかかる課題の解決に取り組み、持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも貢献しています。■概要 農学部では例年8割前後の学生が大学院に進学します。また、就職先は官公庁、公的研究機関、化学・食品等の製造業、バイオテクノロジー関連産業などはもちろん、商社や金融・保険業からコンピュータ関連まで、年々幅広くなっており、多くの卒業生が公務員や研究・開発職、あるいは総合職として、各界で活躍しています。■就職先の例 富士通㈱/任天堂㈱/伊藤忠商事㈱/住友商事㈱/㈱キーエンス/鹿島建設㈱/トヨタホーム㈱/㈱三菱UFJ銀行/㈱日本政策金融公庫/双日㈱/アクセンチュア㈱/大和証券㈱/ライオン㈱/オリックス㈱/㈱ニトリ/㈱SHIFT/三井住友海上火災保険㈱/西日本旅客鉄道㈱/京都大学/総務省/経済産業省/林野庁/国土交通省 など■取得可能な資格 農学部では教育職員免許状の取得を目的とした教職課程のほか、食品衛生管理者・食品衛生監視員、測量士補、樹木医補といった資格の取得・認定に向けた教育課程を設けています。■取得可能な教育職員免許の種類と教科森林科学科……………中学校一種「理科」、     高等学校一種 「理科」※1食料・環境経済学科……高等学校一種 「農業」 ※2※1 森林科学科以外の学科に入学した学生も、森林科学科に おける所要資格を満たせば取得可能です。※2 食料・環境経済学科以外の学科に入学した学生も、食料・環境経済学科における所要資格を満たせば取得可能です。2024 年度 卒業生の状況その他2.5%卒業生 みなさんは、疲れたときに甘いものが欲しくなるという経験はありませんか。じつはこのとき、脳が体に必要な栄養素を認識し、過去の食事経験に照らして食べたいものを選択する、意識下のメカニズムがはたらいています。こうした食行動は意識にのぼらないからこそ、その全容はまだわかっていません。「生き物」としての体と「食べ物」との相互作用に着目することで、「食べる」という行動の解明に挑んでいます。 糖や脂質の摂りすぎによる生活習慣病が大きな問題となる現代において、食行動をいかに制御するかは重要な課題です。三大栄養素である糖分と脂質、タンパク質は、それぞれ体にとっての役割が異なります。つまり、生体機能を維持するうえで、「糖が足りない」、「脂質が足りない」と個別に摂取量を調節する仕組みがあると考えられます。たとえば私は、糖を摂取することで体内ではFGF21が生成されて脳のオキシトシン神経に作用し、「糖を充分に食べた」と充足感を得るメカニズムを発見しました。別の食品成分でそのメカニズムに働きかけることができれば、糖分の摂り過ぎを抑制でき、肥満症や糖尿病の治療につながります。「なぜ食べたくなるのか」の理解をとおして食品開発や創薬への応用も展開し、健康寿命の延伸という社会課題に取り組んでいます。 京大農学部では、微生物や動植物、資源となる生物や森林などの生態系、食品や環境など、地球上のありとあらゆるものが研究対象になります。教員の専門も多種多様で、私は医学部出身ですし、理学部出身の教員もいます。興味の範囲がひろく、分野に囚われずに新しいことに挑戦したい人には最適の環境です。 いまはまだ漠然とした興味でも心配ありません。高校までに得られる知識は学問のほんの一部。目標を絞りこむよりも、関連することはなんでも勉強してみる貪欲さがたいせつです。既存学問の常識に染まっていないからこそ生まれる柔軟な発想もあります。京大農学部の自由に学べる環境で、自分にしかできない研究に挑戦してください。「工学の視点から農業を支える」という考え方は、高校生のときには想像したこともなく、新しい学びとの出会いでした。学生の頃は学科を横断して農業を深く勉強し、教室や研究室でやいのやいのと議論していました。現在は農家さんが抱える様々な課題の解決を支援する仕事をしていて、農地・水利施設の整備や農業機械の導入が農家さんの負担を軽減する効果を実感しています。苦しい受験勉強を乗り越えた先にある好奇心と学びは、きっと、社会で生きる糧になります。大学院農学研究科57〈農業〉を深く追究し、丁々発止の議論に明け暮れた大学時代未知数な食行動のメカニズムを解明し、健康的な食生活に貢献大学院の紹介「生命・食料・環境」を究める卒業後の進路

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