九州大学 GUIDE BOOK 2025
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「強い探究心」と「広い視野」を常に持ってほしい,これが大学生活6年目となる私から,この文章に目を向けてくれた人に伝えたいことです。科学は自然科学,応用科学,人文科学の3つに大きく分けられると言われています。その自然科学の基盤を担う領域が理学部で学び研究できるものになります。そんな自然科学を深く知りたい,未知の現象を発見したいという探究心があれば,それだけで十分理学部に向いてい方や整理の仕方に対する新たな気づきの契機や,さらには論理的思考力を鍛える機会も得られます。端的に言えば,法学部での学びは,将来どのような進路を志すとしても必ず役に立つということです。 法学部では,高学年次(3・4年次)に,特定の分野やテーマに対して少人数で集中的に取り組む演習(ゼミ)に所属することになります。私は「国際取引法」を専攻するゼミに所属しました。そこでの主たる活動の一つは,大学対抗交渉コンペティション(INC)大会への挑戦でした。この大会は,仮想の企業間交渉案件について,参加学生が各企業の代表としてロールプレイし,対戦校と模擬交渉を行うものです。大会に向けた準備として,普段のゼミ活動においても,ディベートや模擬裁判に取り組みました。そして,大会直前の時期には,問題となっている交渉案件に関わる法律について外国語文献も含めて調査し,交渉計画を立て,さらに,提案書面も準備しました。大会の審査には,企業実務家や弁護士の方々が名を連ねるため,そこでアピールするためには論理的でかつ現実的な内容の提案書面に仕上げる工夫が重要でした。このチャレンジングな活動のために,朝から晩までチームの仲間と学校に集まり議論を交わした日々は,苦労も多かった分忘れられない思い出になりました。法学部令和5年3月卒業大月 隆寛部経済工学科に入学することを決め,経済学を学んでいくうちに社会への理解が深まり,自分は何に興味があるのかが明確になったことで,自分にとっての社会人像を描くことができるようになりました。 ここでは私の経験をもとに,経済学部での学問と課外活動の2つから,大学で学べることについてお伝えできたらなと思います。 まず学問についてです。経済学部の授業は日常の生活に絡んでいるものが多く,今後の人生にも役立つものばかりです。企業分析・金融・財政・経営・社会保障など幅広い分野の授業が存在しており,社会の仕組みを様々な角度から捉え,そして理解することが出来ます。将来のキャリアに関する多くの選択肢を知ることができるので,どの授業も楽しく勉強に取り組めましたし,高校の時には知らなかった職経済学部経済工学科令和4年3月卒業小畑 杏奈るのではないかと思います。そのような知的好奇心は,理学の道において何よりも強い駆動力になります。もし今はそれほどはっきりしていないという人も大丈夫です。昔話にはなりますが私自身,地球惑星科学(地惑)を選んだ理由が「何か地球や宇宙のことを調べたら面白そう」とかなり大雑把なものであったものの,充実した4年間を過ごし現在の大学院での生活に繋がっているからです。おそらく今すぐに無理して探す必要はないですし,これから時間をかけて惹かれる分野に出会えることを期待します。理学府地球惑星科学専攻修士課2年大村充輝それでは,今持っている興味が大学生活の間でずっと続くものなのでしょうか。それが理想だと考える人はもちろんいると思いますが,転々と変わっていくこともあり得ると考えています。そこで重要なものが広い視野です。見聞きする情報を初めから絞ることなく色々な分野について目を向けておくことで,面白いと感じるものに出会う可能性を広げることに繋がります。それだけでなく,ある事物に対する切り込み方を増やしたり,異なる分野間の繋がりを見つけるきっかけにもなります。この また,私は3年の後期からゼミ長としてゼミ運営にも携わっていました。年間のゼミ活動計画を策定したり,ゼミ生のモチベーションにも気を配ったりして,論理的思考力の訓練にとどまらない活動を続けてきたことは,就職活動における自信にも繋がりました。 例えば,就職活動においてエントリーシートを書く際は,大学対抗交渉コンペティションで提案書面を準備した時の経験を活かし,アピールポイントが明確になる書き方を追求することができました。また,就職活動の面接においても,何をどの順番でどのように話せば伝わりやすいのかを研究した模擬交渉の経験が心の支えになったのを覚えています。複数内定をいただくことができ,私は農林水産省で働くことに決めました。ゼミ活動を通じて輸出入の問題に対する調査に取り組んできた経験から,特に,農林水産物の輸出入の分野において,社会貢献に繋がる仕事がしたいと考えたからです。 最後になりますが,九州大学法学部では学びたいことと出会い,それを自由に学べる最高の環境が用意されていると思います。実際私の大学生活は自分のやりたいことを見つけ,それを突き詰めた4年間だったと思います。さあ,皆さんも九州大学法学部であなただけの大学生活を始めてみませんか?業に興味をもつことができました。また,経済工学科では,2年次から履修できる専門科目が比較的多いため,資格の勉強との両立を目指す学生も多くいました。このように,経済学部は,将来自分が何をしたいかに悩んでいる人を助けてくれるだけでなく,将来の夢が決まった後にその夢に向かって頑張れる環境が整っている,そんな学部です。 また,無理のないカリキュラム体系のため,勉強以外の活動も積極的に取り組むことが出来ます。私は卒業のために必要な単位は3年生で取り終わるように授業を取得し,留学やアルバイト,サークル活動にも打ち込み,充実した4年間を過ごすことが出来ました。みなさんも経済学部のわくわくする授業と時間を使って,自分のやりたいことを見つけてみませんか?理学部では,座学の授業に関しては他学科でも自由に授業が受けることができたため,物理に興味が寄っていた私は地惑の授業に加えて物理学科の授業もいくつか聴講していました。そうしたことで,当時は何に役立つかなんて気にもせず勉強していたものが,後々研究を進める上で助けになったこともありました。学年が上がるにつれ,研究室・ゼミの配属などによって興味の対象が狭く深くなっていくことは自然に起こりうることです。しかし,それまでの間は広く浅く情報を集めて,色々な分野について興味を持って積極的に学んでほしいと思います。ここまで勉学に重心を置いたお利口な話でしたが,大学生活の醍醐味はやはり私生活面を含めて自由が増えることではないでしょうか。授業のない時間ではサークルやアルバイト,長い休暇中には留学や研究体験などと,時間を有効に活用する術がたくさんあります。最初に述べた二つのキーワードは,そのような勉学以外の場面でも役に立ってくれると思います。あっという間に過ぎていく4年間ですが,みなさんの大学生活が充実したものになることを願っています。受験生の皆さんへ 皆さんは,法学部に対してどのようなイメージをお持ちでしょうか?入学する以前の私は,弁護士を目指す学生が多い学部で,そこでは法律の内容を覚えるための授業が多いのではないかといったイメージしか持てていませんでした。しかし,九州大学法学部で4年間を過ごした結果,そのイメージは大きく覆されました。 まず,周囲の仲間が目指す進路が多様であるということに驚きました。もちろん,弁護士・裁判官・検察官を目指す学生も少なくなく,そのために法律の専門家となるためのトレーニングを受けられる環境が整えられています。しかし,私の身の回りの先輩や同期には,民間企業への就職や公務員を目指す仲間も大勢いました。実際,法学部においては,法律そのものに対する理解を深めることにとどまらず,物事の捉え先輩からのメッセージ 将来自分が何をしたいか,どの学部に行けばいいのか,悩んでいませんか?私も高校時代は,自分が将来何をしたいのかわからず,志望校の決定にとても悩んでいました。しかし,理系から受験できる経済学「知りたい」をパワーに

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