名古屋大学 大学案内 2024
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「ナノスケールの材料開発でエネルギー問題の解決に役立ちたい。」ナノ成長プロセスでエネルギー機能材料を創製する09GUIDE TO NAGOYA UNIVERSITY 2024Researcher半永久的に動作する微少電源の実現 センサーやリモートコントロール、携帯電話など、私たちの身の回りには驚くほどたくさんの小型電子機器があり、便利で安全な生活を支えています。これら小型機器の主なエネルギー供給源はバッテリーですが、さまざまな環境で持続的かつエコフレンドリーに使用するためには、機器の低消費電力化や、自己発電による電力供給が不可欠です。 そこで、私たちは材料が秘めるさまざまな機能の可能性に注目し、これらをナノスケールで制御して成長させることで、従来にないエネルギー機能材料の創製を目指しています。例えば、機械エネルギーを電気エネルギーに変換する機能をもつ圧電材料を、高エネルギーレーザーを用いて特殊な条件で基板上に堆積させると、ナノロッドと呼ばれる棒状の結晶が成長し、薄膜と比較して飛躍的に大きなエネルギー変換性能を示すことを明らかにしました。また、ナノロッドの密度を制御することで、発生可能な電力を向上できる指針が見つかりました。これらの技術は、環境中の振動で電力を発生する発電素子(エナジーハーベスタ)の小型化を可能にし、IoT・センサネットワークの構築に役立つことが期待されます。 そして、材料に電圧を加えることでその誘電率が変化するチューナブル特性を利用した新しい薄膜デバYAMADA Tomoaki大学院工学研究科エネルギー理工学専攻エネルギー機能材料工学グループ 教授PROFILE専門は、材料とそのエネルギー応用。東京工業大学大学院理工学研究科材料工学専攻 博士課程修了 博士(工学)。スイス連邦工科大学ローザンヌ校材料研究所博士研究員、東京工業大学大学院総合理工学研究科特任助教、名古屋大学大学院工学研究科准教授を経て現職。手島清一記念博士論文賞、日本セラミックス協会進歩賞、米国セラミック協会 Richard M. Fulrath Award 受賞など。イスにも取り組んでいます。これにより、例えば従来よりも電力消費が少ない携帯電話の実現など、環境への負荷低減が期待されます。持続可能な社会の構築に貢献 最近では、従来の電気による回路を光で置き換えるオールフォトニクス・ネットワークも注目が集まり、これにより低消費電力化や、通信の低遅延化が期待されています。これにつながる技術として、薄膜の光変調デバイスに利用できる材料開発をしています。具体的には、電圧で屈折率が変わる材料の開発をしており、実用化に適した材料が見つかりつつあります。さらに今後は、ウエアラブルな微少発電に利用できる材料開発も注力していきます。 エネルギーは、人間が生きる上で不可欠であり、環境問題を含む持続可能な社会の構築にも深く関わるテーマです。巨大な発電設備や送電のインフラの研究も重要ですが、ナノスケールの材料開発により、エネルギーの効率化や、半永久的に動作する微小電源の実現など、身の回りにある機器からエネルギー問題の解決に貢献することも重要です。エネルギーに興味がある人は、材料、計測、システムまで広くカバーしている本学科で、ぜひ一緒にチャレンジしてもらえたらと思います。名古屋大学の研究者たち山田 智明03

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