大阪大学 GUIDEBOOK 2021
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 「歯は骨に埋まっている状態で、初めて機能します」と、波多准教授は語ります。「歯が生えてくるときは、あごのなかから骨を溶かしながら出てきますし、そのあとも周りの骨に支えられて機能します。その骨が歯周病などで溶けてなくなってしまうと、歯はもうグラグラで、食事も満足にできません。さらに例を挙げると、矯正治療中の歯は、骨を溶かしてスペースを作りながら移動しています」。 歯科医は歯だけを治療しているのではありません。「歯科治療の最大の目標は、骨をコントロールすること」。骨が形づくられるまでには、2つの経緯があります。「ひとつは、『層状に盛り上がっていく』もので、頭の骨などで見られます。もうひとつは、『最初に軟骨でおおよその形を作ってから硬い骨に置き換えていく』もの。指などは、5本のだいたいの形が初めは軟骨で作られ、そのあと硬い骨に置き換えられるのです」。 研究を始めた頃は骨に関心を持っていましたが、次第に骨を形づくる軟骨の重要性にも気づくようになり、骨や軟骨が形成される過程を遺伝子レベルで研究しています。PROFILE 波多准教授は、一時、歯科医として患者の治療に当たっていましたが、次第に骨を研究する面白さにとりつかれ、研究者に転向しました。専門は分子生物学。骨の発生や形づくりに欠かせない軟骨組織の重要性に注目し、遺伝子レベルでの研究を進めています。波多 賢二(はた けんじ) 1998年大阪大学歯学部卒業、2002年同歯学研究科修了、歯学博士。同年大阪大学歯学部附属病院医員、03年日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、06年大阪大学歯学研究科助手、07年同研究科助教、10年同研究科講師、13年より現職。「骨がどのように形づくられるか」に興味骨を究めることで歯科医療に貢献したい~骨や軟骨が作られるメカニズムを探究~歯学研究科 准教授 波多 賢二8大阪大学の研究 ~知を拓く人、新たな探求と挑戦~

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