大阪大学 GUIDEBOOK 2022
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 宮下准教授の専門はトルコ文学史。オスマン帝国の古典詩を研究し、詩歌を通じて当時の人びとの心性を解読する一方、現代トルコ文学の紹介にも力を注いでいます。とくに小説に関しては、「まず日本語で読めるようにならないことにはそもそも日本で普及しない」との思いから、2006年ノーベル文学賞を受賞したオルハン・パムクの作品をはじめ、数々の作品を日本語に翻訳。世界文学の視点を絡めた現代トルコ文学に関する論考も発表しています。 日本では『千夜一夜物語』など、アラブ・ペルシア文学の古典は簡単に翻訳版を読むことができますが、オスマン帝国時代以降のトルコ文学は、翻訳を探すのが困難です。そのなかで宮下准教授は、日本では未開拓分野であるトルコの古典詩の研究を始めました。 「ルネサンス期のオスマン帝国の古典詩は、いわゆる本歌取りが言語も時代も越えアラブ、ペルシア、チャガタイ語文学まで及ぶダイナミズムが魅力。その一方で典故的、高踏的な性格が強く、一見すれば千年もの間、散房花序と美男美女しか読んでいないように見えることもあります。ですが、なかにはエリートたちが町方の職人や商人を揶揄したり、その逆にお偉方を洒落のめPROFILE古典文学の変化をとらえて往時の人びとの心を探るトルコ文学の魅力を伝えたい~言語・文化を通して古典詩から現代文学までを理解~宮下 遼 (みやした りょう) 2004年東京外国語大学外国語学部卒業。09年東京大学総合文化研究科単位修得満期退学、12年博士号(学術)。14年大阪大学言語文化研究科助教、15年同研究科講師を経て16年より現職。著書は『多元性の都市イスタンブル:近世オスマン帝都の都市空間と詩人、庶民、異邦人』(大阪大学出版会)など。翻訳作品は『わたしの名は赤』、『僕の違和感』(ともにオルハン・パムク、早川書房)など。言語文化研究科 准教授 宮下 遼2大阪大学の研究 ~知を拓く人、新たな探求と挑戦~

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