大阪大学 GUIDEBOOK 2022
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業を終えれば、すぐに次の細胞株に取り掛かれるよう工夫されています。作業モジュールの稼働率を高めれば、コストを下げることができます。おもちゃのブロックのように各モジュールを繋ぐ構造が、フレキシブルな工程変更を可能にしているのです。 紀ノ岡教授は「これまで細胞培養といえば、熟練したエキスパートが『神の手』のような名人技で行うイメージが強かった。しかし、それでは大量の細胞を安定して培養できません。再生医療技術を産業として育てるには『神の手』を『機械の手』で置き換え、一連のプロセスを最適化したシステムとして構築していくことが欠かせません。私たちはこれを『細胞製造性』と呼んでいるんです」と説明します。 しかし、「神の手」を「機械の手」に置き換えるといっても、ことはそう簡単ではありません。 人間は日本舞踊のようにゆっくりとなめらかな動きはできますが、長時間手を静止させることはできません。それとは反対にロボットは同じ作業を繰り返したり、アームを長時間静止させたりすることは得意ですが、なめらかな動きは苦手です。 「細胞は衝撃に弱く、ちょっとした振動でダメージを受けてしまう。そこで細胞培養のエキスパートの動きを加速度センサーを使って解析し、それをロボットアームに真似させました。初めの頃はジェットコースター並みの加速度。これでは細胞はたまりません。徐々にプログラムを改良し、なめらかな動きを実現しました」。 理化学研究所が2014年にiPS細胞からつくった網膜細胞を難病の患者さんに移植した際の費用は約1億円。今の装置ならば約250人分の網膜細胞が約4ヶ月で自動培養でき、費用はざっと半分、製造工程に限ればコストは約10分の1に抑えられるといいます。 デリケートな作業の必要性に加え、細胞には従来の医薬品にはない気まぐれさがあります。それを手なずけ、品質を保つ難しさを紀ノ岡教授は子育てに例えます。 「子どもって、言葉のかけかたで良くなったり、だめになったりしますよね。しかも、何か言ってその場ですぐ反応してくれればいいけれど、内面に積み重なったものが1ヶ月後に爆発したりする。細胞も同じで、何か薬を入れても1日後とか1月後にようやく効果が表れる<遅発性>があります。生きている(代謝している)ので、時間とともに細胞を構成する要素が変わっていく<時間依存性>もある。また今の技術では細胞の状態をリアルタイムで測ることができず、あとになって初めて分かる<遅延性>もあります。普通の化学製品なら、原料の品質を一定にし、工程をきちんとコントロールすれば済む。しかし、細胞製造では製品が生きものであるがゆえの、想定外の品質のばらつきが生じる。これを私たちは<内なる乱れ>と呼んでいます」。 細胞製造は数ヶ月と長期に及ぶことが多く、<内なる乱れ>が累積しやすくなります。こうした不確定要素を考慮しながら、安定した品質の細胞を製造するためには、生物学的側面と工学的側面の双方を理解したうえで、それらの橋渡しとなる製造工程をデザインする必要があるのです。 さらに再生医療分野の研究の急速な進歩により、細胞製造に求められる水準も高度化していきます。 初めは細胞そのものの培養だったものが、細胞をシート状に加工したり、それを何層にも重ね合わせたりしたものの製造が要請されるようになりました。さらにはオルガノイド(ミニ臓器)や臓器そのものの製造も現実のものとなりつつあります。 要請に応えるには、細胞が三次元構造を持つ組織のなかでどう動くか、例えば細胞シートのなかで血管がどう形成されていくかなどの定量解析が重要になります。研究グループでは、こうしたプロセスをコンピュータで再現できる三次元培養シミュレータなどの開発にも取り組んでいます。生物学と工学との橋渡しを今後の再生医療を進めるカギとなるヒト、モノ、ルールの「コトづくり」とは?続きはWebでぜひご覧ください。紀ノ岡教授にとってとは0から1を作り出すクリエイターと、1を100にするディベロッパー、100を維持するキーパーがいるとしたら、自分は、クリエイターとディベロッパーの間の立ち位置だと思っています。料理に例えるなら、自分はシェフで、素材から料理をつくり、さらにレシピを公開する人だと考えています。大阪大学の最先端の研究をWebでもご覧いただけます。研究特集教育システムインフォメーション7大阪大学の研究キャンパスライフ

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