SAIDAI CONCIERGE vol.26
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来年、ベトナムでリサイクルに関する一大プロジェクトがスタートします。埼玉大学と現地の大学の共同研究として実施され、持続可能な社会を構築する上で避けて通れない「ゴミ問題」という、地球規模の課題を解決を目的とした注目のプロジェクトです。フィールドは世界——地球規模の課題を解決する注目の研究に携わるグローバルに活躍する人材へ右から、川本 健教授、MOHD SAUFI(モハマド ソフィ)さん(理工学研究科博士前期課程2年、クアラルンプール・ケダ高等学校出身)、吉田勇輝さん(同1年、群馬県立館林高等学校出身)理工学研究科 川本研究室今年8月25日にハノイ市内で行われたプロジェクトの技術協力署名式の様子。川本教授も出席「現在、ベトナムは経済成長が続いており、開発によるゴミが増加しています。それに伴い、不法投棄や環境汚染などの問題が深刻化しているのです」 そう語る理工学研究科の川本 健教授はベトナムの首都・ハノイ市で建設廃棄物(建廃)のリサイクルを推進する国際的なプロジェクトの中心人物。 プロジェクトは「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)」の支援を受けて、埼玉大学とベトナム国立建設大学が共同で行うもので、研究費の総額は約4.8億。研究期間は来年から5年間で、日本側からは埼玉県環境科学国際センターと国立環境研究所も参加し、ベトナム政府が2025年までの目標に掲げる「建廃リサイクル率50%」実現への貢献を目指します。具体的には、建廃を適正に管理するためのガイドラインの整備や現地にリサイクルという概念を根付かせるためのビジネスモデルの提案、リサイクル資材の研究などを行うとのことです。 リサイクル資材の研究について、川本教授は「技術開発により、廃材の価値を高め、現地の課題を解決する資材として利用することで『ゴミの地産池消』を目指す」と説明。例えば、建廃に含まれる軽量気泡コンクリートは、ヒ素や重金属類を吸着することが研究で分かっています。そこでこれをリサイクルし、汚染水を浄化する資材として再利用しようというのです。この他、大雨時の冠水を抑制する路盤材への活用についても研究が進められます。 さて、プロジェクトには川本教授の研究室に在籍する学生も参加しますが、マレーシアからの留学生であるMOHD SAUFIさんもその1人。SAUFIさんは「建廃の問題はマレーシアでも深刻なので、プロジェクトで得た経験を自国に持ち帰りたい」と語ります。ゴミ問題は他国も悩む地球規模の問題。それ故、プロジェクトの成功は世の中に大きなインパクトを与えると期待されるのです。また、同研究室の吉田勇輝さんが「調査など、私たちにも現地での役割が与えられますが、学生の立場で現地プロジェクトに携われる貴重な機会なので、様々な面でスキルアップを図りたいです」と話すように、日本の学生にもプロジェクトへの参加は意義深いものになるでしょう。SATREPSとは?「科学技術振興機構(JST)」と「国際協力機構(JICA)」が共同で行う事業プログラム。途上国における地球規模の課題を、日本と現地の科学技術協力によって解決するプロジェクトへの研究支援などを行っています。Profile川本 健[かわもと けん]理工学研究科 教授1994年 東京大学農学部卒業1996年 東京大学大学院農学生命科学研究科修士課程修了1997年 埼玉大学工学部助手2007年 埼玉大学大学院理工学研究科准教授2013年より現職11SAIDAI CONCIERGE

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