SAIDAI CONCIERGE vol.26
15/16

制作ミーティング 8月の暑い一日、制作チームのメンバーが会議室に集合。7作目で打合せもスムーズだ。坪谷さんから、これまでの作品・イメージの流れとともに、「物語−Story」をテーマとした新ポスターの構想が説明される。それを受け、私は埼玉大学の最新の動きと、学長としての考えを語る。その想いは入学式での式辞で新入生に語りかけたもの、日本技術士会の会報9月号巻頭言でも触れている。学長の想い:AI・チームワーク・学習 今年2月、人工知能学会はAIが社会の構成員となるため研究者と同等に倫理指針を遵守しなければならないとした。その姿は鉄腕アトムやドラえもんとのこと。米国電気電子学会もAIを社会の価値観に沿ったものにすることで「人間の幸せの増大」を進歩の基準にできるとしている。つまり、AIと人間との補完的機能だ。 ところで、埼玉大学の4人が加わった理化学研究所ニホニウム発見チームは2016年ベストチーム・オブ・ザ・イヤーを受賞している。チームとしての効果と効率だけでなく、メンバーの満足と学習が評価されてのこと。今の「知識社会」にあって、知恵を結集して社会イノベーションを起こすためには、多様な専門家の協力、チームワークが不可欠だ。 AIは極めて優秀な専門家で「人間の幸せの増大」に寄与する。ただ、正解のない問題や予期せぬ事態への対応には、厳密なルールだけではだめで「ゆるさ」が必要。人間の専門家の出番だ。チームワークを発揮すべく、人間とAIは互いに切磋琢磨し、それぞれにチームの一員としての満足と学習を追求しなくてはならない。結局、人間も、AIも、継続的な学習はいつまでたっても必要だ。新ポスターのコンセプト この学長の想いと大学の取組を踏まえてまとめたコンセプト、埼玉大学からのメッセージが以下である。「かつてSF映画や漫画に描かれた21世紀を生きる私たちに必要なのはどんな物語なのだろう。国籍、年齢も多様なひとが集う埼玉大学は、地域の先に世界との協働を目指した多様なプロジェクトのある多文化キャンパス。人智を超える自然現象と共に生きる知恵、高齢化を見据えたAIを導く倫理など、一つの専門分野で提言できない課題に挑み、社会イノベーションを目指す。それぞれの個性が発揮されるチームワークから、これからの物語が生まれるだろう。」ポスターに込めて 坪谷さんは「埼玉大学が国際交流やダイバーシティを推進しているイメージをみなさんに伝えたい。キャンパスにいながら留学生でさえも、他文化、異文化を体験でき、共存、協働を目指す風土、予測不可能な近未来を描き出す物語、それぞれの個性を発揮できるチームワークで生み出してゆく物語をヴィジュアルにデザインした」と語る。多文化キャンパスのカラフルさ、動きのある対話の輪、物語のワンシーンのような光と影を楽しみつつ、ポスターに込められた多様な想いを感じてもらえれば、と願う。埼玉大学ポスターシリーズⅢ 2017_2 物語−Story Photo : TERABAYASHI MASAYO坪谷彩子、デザイナーサイエンスや教育、町おこしから里山探検まで、多岐に亘った分野で、体験をアートにする活動をしている。つなぐことデザイン:ブックトウキョウ主宰女子美術大学非常勤講師14SAIDAI CONCIERGE

元のページ  ../index.html#15

このブックを見る