SAIDAI CONCIERGE vol.26
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Welcome to my laboratory教養学部 日本・アジア文化専修/劉研究室日本語を学ぶ外国人の視点から日本語教育のあるべき姿を考える当然のことを当然としてやり過ごさない 私が担当する講義は、日本語教育者を目標にする留学生と共に日本の学生も数多く受講していますが、彼らにも日頃使う日本語に対し、気になる点を探し、何が気になるのかについて考える癖をつけてもらいたいですね。このような取り組みを続けることで、物事を深く考える能力が身につきます。講義でグループワークやディスカッションにより、学生自ら考える時間を設けているのもそんなスキルを向上させるためなのです。そこに留学生が参加することで、日本人だけでは気付けないことが発見できるのも意義があると考えています。日本語に関する細かい研究分野が魅力 埼玉大学には、日本語というカテゴリーの中に「日本語学」「言語学」「日本語教育史」「言語政策」など、多様な分野の研究に取り組む先生方がいらっしゃいます。そのような先生方と連携できるのは、様々なアプローチが必要な「日本語教育学」を研究する上では大きなメリットです。一方学生のメリットは、海外での教育実習など実践的な学びの場が用意されているということ。さらに、私のゼミでは一橋大学など、他大学と合同で行うゼミ合宿もあります。学生たちには、校内の留学生はもちろん、多様な交流によって視野を広げて欲しいですね。message劉准教授より受験生へ教科書にない言葉が使われ戸惑う訪日外国人 日本語が母国語でない人たちへの日本語教育を研究する「日本語教育学」が専門ですが、私自身、中国で日本語教育を受けた経験があります。 現在は、その経験を活かし、当時の指導で理解し難かった部分や実際に日本で話される言葉と教科書の内容がずれているため、来日後、理解できなかった言葉などについて研究を進めています。例えば、日本でよく使われる「知らねー」「やべー」などのくだけた言葉は教科書には載っていません。そのため、日本人との会話やテレビで、「わりー」「だりー」などを聞いても、外国人は理解できなかったりするのです。 ところが、「エ段長音化」と呼ばれるこのような表現は、実はアイウエオの五段における交替(母音が変化する)現象が顕著だという日本語の特質に沿ったもの。もし、このような現象があることを知った上で学習できれば、効率よく実用的な日本語を習得できます。 そこで、このような表現や現象について、文法や古語など、様々なアプローチから解き明かしていこうという訳です。ニア・ネイティブになるために必要な学習方法とは? また、近畿方言も外国人にとっては理解しにくいポイントの1つ。テレビでは近畿地方出身の芸能人などが話す関西弁をよく耳にしますが、日本語教育の現場では、やはり取り上げられることがありません。 そこで、このような表現の中でも、日常的に耳にするものを「準標準語」と定義し、日本語学習者に教える必要があると提唱しています。 研究の最終的な目的は、日本語の上級学習者がどうすれば、日本人と同様の会話レベルを有する「ニア・ネイティブ」になれるか?——その効率的な指導方法を導き出すことにあります。初級・中級レベルであれば、これまでの学習方法で目標に達することが可能です。しかし、上級者になると誰かの指導を仰ぐというよりは、自らがスキルアップを図る必要があります。そこで、そのような人に向けた教科書の作成や指導法の確立を視野に入れ、研究と実践を行っているのです。Profile劉 志偉[りゅう しい]人文社会科学研究科 准教授1997年 (中国)河北大学外国語学部卒業2009年 京都大学大学院人間・環境学研究科 博士課程修了2011年 首都大学東京人文科学研究科 日本語教育学教室助教2017年より現職5SAIDAI CONCIERGE

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