SAIDAI CONCIERGE vol.26
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Welcome to my laboratory細胞内の活動を遺伝子レベルで解明 細胞の中にあるミトコンドリアは、生き物が活動するためのエネルギーの大部分を作る重要な小器官です。ミトコンドリアが正常に機能しつづけるには、その形やDNAが正しく維持され、古くなって働きが鈍くなった部分が排除されなければなりません。これらの機構には多くの遺伝子が関わっており、遺伝子に不具合が生じることで、細胞の寿命が短くなり、様々な病気を引き起こすことも分かってきました。 我々は、ミトコンドリアが正常でなくなることで寿命に影響する遺伝子の異常を見つけるために、「アカパンカビ」の短寿命変異株を使った研究を行っています。正常なカビは数年間菌糸を伸ばし続けますが、短寿命変異株は約20日でそれが終結します。短寿命をもたらす遺伝子の異常を特定し、寿命との関係を解明することが研究の目的です。純粋にサイエンスに打ち込む気持ちで パーキンソン病など、いくつかの難病がミトコンドリアの異常が原因で起こることが現在明らかになっています。しかし、ミトコンドリアを正しく維持するために働く遺伝子の多くは未解明です。我々の研究が基となって遺伝子の機能が解明されれば、このような病気の治療法の開発につながるかもしれません。 とは言え、あまり医学的な意義にはとらわれず、純粋に遺伝子の機能を解き明かそうというスタンスで取り組んでいます。これまでもミトコンドリアの機能に関わる遺伝子をいくつか発見してきましたが、もっと多くの関連する遺伝子を見つけ、生命現象の本質に迫ることが重要だと考えます。短寿命変異株はとても扱いづらいので、色々な工夫をして実験を続けていますが、そのほとんどは失敗ばかりです。しかし、意味のある失敗を積み重ねることが、成果につながると信じています。そのために、論文を読んで思考力を高め、アイデアを具体化して試すことを続けて、根気強く取り組んでいます。理学部 生体制御学科/畠山研究室アカパンカビの寿命に関わる変異株を用いて未知なる遺伝子の機能を解き明かす論文で様々な考えに触れ、視野を広げる 研究室の学生には、自分の研究テーマはもちろん、できるだけ幅広いテーマの論文を読むよう指導しています。他分野の研究者の視点やアイデアに触れることが、オリジナリティを高めることにつながるからです。研究分野以外の論文を読むことは大変ですが、効率的な読み方や、アウトプットの仕方についても、ステップ・アップしていけるよう丁寧な指導を心がけています。そして、その知識と経験の積み重ねによって、将来あらゆる世界において、困難な状況でもしなやかに対応でき、大いに活躍する人物になってくれることを期待しています。純粋な生物好きの要求に応える学びの場 我々が取り組んでいる基礎研究は、純粋に生物学が好きな学生にとても向いている領域だと思います。埼玉大学の理学部生体制御学科では、「遺伝学」「発生情報学」「調節生理学」「細胞機能学」「植物形態・生理学」の5分野について、それぞれを深く学ぶことができるカリキュラムがあり、履修できる講義の選択の自由度が高いことから、学生が興味をもって専門性を伸ばすのにぴったりな環境だと言えます。 実際、この学科の学生は、本当に生物好きが多いことをいつも感じています。message畠山准教授より受験生へProfile畠山 晋[はたけやま しん]理工学研究科 准教授1990年 東京理科大学理学部第二部化学科卒業、 食品会社勤務、研究所勤務を経て、1998年 埼玉大学大学院理工学研究科博士後期課程修了、 ベンチャー企業勤務、医学系大学ポスドク、 農学系大学研究員を経て、2004年 埼玉大学総合科学分析支援センター講師2015年 埼玉大学科学分析支援センター准教授2016年より現職▲研究で使われる「アカパンカビ」。このカビは遺伝学のモデルとして優れており、遺伝子の研究に古くから使われている撮影場所:埼玉大学科学分析支援センター8SAIDAI CONCIERGE

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