SAIDAI CONCIERGE vol.28
10/16

Welcome to my laboratory通学路の安全を確保するためにできること 工学部環境社会デザイン学科の交通・計画グループでは、都市交通を軸に、地域や都市の安全の確保や賑わいの創出などを目的とした幅広い研究を行っています。その中で私が専門にしているのは住宅街の生活道路の交通安全に関する分野。例えば、通学路の安全を確保するため、通学の時間帯に自動車の侵入を禁止する交通規制が行われるケースがありますが、規制していても通学路に自動車が入ってしまうことがしばしば起こります。このような課題に対して、我々のグループを束ねる久保田 尚教授はライジングボラード(車の侵入を阻むポールが必要に応じて道路上に出てくるもの)という装置を開発していますが、地域の課題を解消すべく、このような構造物の開発や実証実験などを行うのが我々の具体的な研究内容になります。 また、ライジングボラードの他にも、周辺の振動、騒音を抑えたハンプ(道路の一部を隆起させることで、通行する自動車に振動を与え、速度を抑える構造物)などの研究を行ってきました。効果を最大化するためには設置前の実験が必要不可欠 このような装置がいかに優れたものであっても、闇雲に設置すればよいというものではありません。十分な効果を得るためには、どこに、どう設置するのかが重要です。例えば、ハンプの場合、どのくらいの間隔で設置すれば、通行する自動車のスピードを効果的に抑制できるのかを、実験や調査を繰り返して、明らかにしていきます。また、このような取り組みはある人にメリットがあっても、別の人にはデメリットが生じるということがあります。事前に実験を行うことは、そのような人たちの不安を解消し、納得してもらうための重要な合意形成プロセスの1つでもあるのです。工学部 環境社会デザイン学科/久保田・小嶋・加藤研究室(交通・計画グループ)道路の課題解決を通じて誰もが安全に過ごせる街づくりを実現人の役に立ちたいという思いを大切に この研究では、地域の人たちから話を聞き、外からは気づくことができない地域の課題を明らかにしていく作業が非常に重要です。そのためコミュニケーション力が必要不可欠な分野だと考えています。大変なことも多いですが、取り組みを行った地域の人たちからの「本当によかった。助かった」という声を聞くと本当にやりがいを感じます。 そもそも「工学」という学問の目的は、人の役に立つものを作ることですので、ゼミの学生には、地域の方々の声を聞き、その声に役に立ちたいという思いを持って、頑張って欲しいですね。学部の枠を感じない理想的な研究環境 都市計画や道路工学という研究分野は、理系の知識やスキルだけでなく、社会学や経済学などの知識やスキルも求められます。逆に言えば、文系理系にかかわらず、何かしら活かせることがある分野なので、興味があれば、ぜひ物怖じすることなく、飛び込んできてもらいたいと思います。また私は大学生の頃から埼玉大学に在籍していますが、全学部が同じ場所にまとまっており、学部の枠にとらわれない研究がしやすいのは、この大学の大きな魅力。私自身、工学部にいながら、住民調査方法について、経済学部の教授に師事して学んだ経験もあります。message小嶋准教授より受験生へ▲久保田教授が開発したハンプ。旧型のかまぼこ型のものに比べると乗り上げ時の騒音、振動が大幅に低減されるProfile小嶋 文[こじま あや]工学部准教授2006年埼玉大学工学部建設工学科卒業2010年埼玉大学理工学研究科理工学専攻環境科学・社会基盤部門後期博士課程修了2010年埼玉大学理工学研究科非常勤講師2012年埼玉大学理工学研究科助教2016年より現職9SAIDAI CONCIERGE

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る