SAIDAI CONCIERGE vol.28
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Welcome to my laboratory教養学部 哲学歴史専修課程/一ノ瀬研究室歴史に埋もれた人々に光を当て、現在の日本を深く知る——暗記は大学で好きなことを学ぶ準備 高校までの歴史という教科は、暗記が中心なので、苦手意識を持つ人が少なくないかもしれません。 しかし、暗記は歴史を研究するための基礎知識を得る作業で、大学の歴史学では、暗記からは解放され、自分が興味のあることを深く調べていきます。例えば、現在、歴史をモチーフにしたゲームやアニメが人気ですが、そのようなものに対する興味をきっかけに研究をしても構いません。その結果、「自分の興味に基づいて考察や調査を行い、何らかの結論を導き出す」というスキルを身に付けて欲しいと思います。複雑なことを分かりやすく説明する力を養う ゼミに参加する学生には「他人の複雑な話を理解し、それを自分の考えと併せて人に説明できる」ようになって欲しいですね。将来仕事を行う上では必要不可欠なスキルですが、これが意外と難しいものです。そのような素養を育むために、ゼミでは、史料を読み、当時の人の考えを把握し、その内容と自分の意見を発表することを実践します。また過去の人々は、我々とは考え方や文化が根本的に異なります。つまり歴史を研究するということは異文化の人々を理解すること。そんな経験もグローバル社会の中で生かせると思います。message一ノ瀬教授より受験生へ戦争の結果の上に成り立つ現代の日本社会 専門は日本の近現代史で、現在はその中でも軍事史を中心に研究しています。 この研究の大きな意義は2つ挙げられます。1つは、平和を実現するために、過去に学び教訓とすべく「なぜ戦争が起こるのか知る」こと。もう1つは「日本という国の現状をより深く理解する」ことです。 終戦から70年以上経っていますが、現代の日本には、第2次世界大戦の影響が色濃く残っています。例えば、憲法の内容もそうですし、国際的には中国や韓国との関係や北方領土の問題も然り——。 戦争を知り、考えることは、現在の日本がなぜこのような国になり、このような立場に置かれているのかを知ることにつながるのです。 また戦争というのは究極の非常事態。その中で人々が何を感じて、どう動いていくのかを知ることで、災害に対する備えなど、得られる教訓は、とても多いと思います。真実を見極めるために終戦時の日本人を改めて考察 現在取り組んでいるテーマは、「終戦時に日本人は何を思ったのか?」ということ。 ドラマなどでは「戦争に負けて、悔しいけれど、泣いてすっきりして復興に向けて立ち上がった」という日本人の姿が描かれることが多いですが、実際のところは、その時に思ったこともその後の行動も人それぞれでした。これまで語られることのなかった人たちに光を当てることで、「日本人にとって戦争とは何だったか?」ということを改めて考察していくのです。 さらにこの研究は、高度経済成長の真の要因を知ることにも役に立つでしょう。その要因はよく言われるような敗戦に対する日本人の反骨精神だけに限らないのです。 もちろん、娯楽としてのドラマや小説で、そのようなストーリーが語られることを否定はしません。ただ歴史学の研究では、光の当たらない部分をあぶり出し、真実を明らかにすることが求められるのです。Profile一ノ瀬 俊也[いちのせ としや]教養学部 教授1994年九州大学文学部史学科卒業1998年九州大学比較社会文化研究科博士課程中退1998年国立歴史民俗博物館助手2007年国立歴史民俗博物館助教2007年埼玉大学教養学部准教授2016年より現職5SAIDAI CONCIERGE

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