SAIDAI CONCIERGE vol.28
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Welcome to my laboratory多分野で応用される数学界で最も活発な研究分野とは? 私の専門は数学の「解析学」ですが、現在研究を行う「調和解析」は、その中でも数多くの数学者が取り組むテーマの1つで、純粋数学や応用数学の中でも非常にアクティブな研究分野だといえます。これは1811年にジョゼフ・フーリエというフランスの物理学者が、固体内の熱伝導を理解するために提唱した法則から派生した研究です。 さて、「調和解析」に関する研究テーマに「スタインの制限問題」と「掛谷問題」というものがあります。前者は、1960年代にプリンストン大学のエリアス・スタイン教授が定式化した予想で現代における「調和解析」の最も重要な未解決問題で、後者は1910年代に日本の数学者である掛谷宗一博士が提示したもの。この2つの問題の間には深い関係性がありますが、現在、私はこれらの問題に基づくテーマを重点的に研究しています。 「調和解析」は一般の人にはあまり馴染みがない分野かもしれません。しかし、その理論がJPEGやMP3などの圧縮技術のアルゴリズムに利用されていたりと、意外と生活に身近なところで応用されています。また純粋数学には「解析学」「幾何学」「代数学」という分野がありますが、「解析学」の理論は他の2つに比べると具体的な計算に重きが置かれています。具体的な内容で、世の中と関わりを持ちながら研究できることが、この分野の魅力ですね。高いほど喜びも大きい?登山と数学の共通点 父も数学者だったので、小さな頃から数学に慣れ親しんできましたが、数学の研究は高い山を登ることに似ていると思います。 麓から頂上が見えない前人未踏の高い山を登る際には、色々なルートを試す必要があるでしょう。数学の難解な定理を証明するのもこれと同様で、初めは何も分からないので、色々なアイデアでアプローチするのです。それを結果に結びつけるためには、大変な作業と時間がかかりますが、だからこそ証明できた時の喜びはとても大きいものになります。この喜びを味わうことが数学研究の醍醐味なのです。理学部 数学科/ニール研究室現代数学で最もアクティブな調和解析——その最重要問題を解き明かすために楽しみながら野心的に研究に取り組む 研究室の学生には、野心と自主性を持って研究に取り組んで欲しいと思います。そのような姿勢は、将来、数学者として活動するにしても、社会に出て働くにしても、必要なことだと思います。学生だからといって遠慮することなく、高い目標を持って研究に邁進してください。 また、研究で成果を出すために最も大切なことは数学を楽しむこと。楽しければ、自ずと勉強もするでしょうから、結果も出やすいのです。今後、大学で数学を学ぶ学生たちには、数学を楽しむ気持ちを忘れないでいて欲しいですね。世界基準に劣らない質の高い研究環境 埼玉大学の数学科は非常にバランスのよい優れた学科だと思います。学内はフレンドリーな雰囲気に溢れ、仕事がしやすいです。また数学という枠組みの中だけでも、幅広い分野の研究が行われていて、それぞれ先進的かつ質が高い印象があります。 このような環境は、学生たちにとっても、私のような研究者にとっても、理想的であることは言うまでもないでしょう。答えが用意されている問題を解く高校までの数学と異なり、答えを自分で探すのが大学での数学。埼玉大学理学部数学科でそんな数学の醍醐味をぜひ味わってください。messageニール准教授より受験生へProfileNeal Bez[ニール ベズ]理学部准教授2003年オックスフォード大学卒業2007年エジンバラ大学大学院数学科博士課程修了2007年バーミンガム大学主任研究員2009年グラスゴー大学講師2010年バーミンガム大学講師2014年より現職8SAIDAI CONCIERGE

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