SAIDAI CONCIERGE vol.27
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Welcome to my laboratory通常考えられない化合物を合成 研究内容を簡単に説明すると「これまでになかった化合物を創る」ということになります。さらに、そのような化合物を通して、新しい理論を生み出すことに取り組んでいます。 といっても、ゼロベースで化合物を設計するのではありません。私の研究では、炭素、水素、酸素、窒素、リンを含む化合物を構成する元素の一部を別の元素に置き換えて新たな化合物を合成します。 例えば、我々の研究室では、2010年に炭素が六角形に結びついた芳香族化合物である「ベンゼン」の骨格を、スズや鉛で置き換えた化合物の合成に成功しています。しかし、このような化合物を作ること自体、非常に困難なことなのです。それは炭素同士の結合は強いのですが、炭素とスズ、あるいは炭素と鉛では結合が弱くなるから。結合が弱いため、そのままでは空気中の酸素や水分と反応して分解してしまいます。 そこで化合物として存在させるには何らかの工夫が必要になるのです。 研究室のメンバーである古川俊輔助教が「普通では考えられない化合物を創ろうとするのが、僕たちが得意としていること」だと語ってくれましたが、まさにその通りだと言えますね。地道に基礎化学の研究を続けることの重要性 この研究の醍醐味は、誰もやっていないことにチャレンジして、成果を挙げれば、新しい理論として教科書に掲載されること。つまり「学問をクリエイトできる」のです。 我々が取り組んでいるのは、基礎化学という技術開発の根幹となる川の流れで言えば最も上流の部分。研究の成果がすぐに社会の役立つものではありません。そこから波及して、様々な学問や技術に影響を与えるものだからこそ、将来どのように応用されるかということより、新しい学問や理論を創り上げることを意識して研究に取り組んでいます。理学部 基礎化学科/斎藤雅一研究室まったく新しい化合物を生み出し化学の教科書に新たなページを刻む偶然の発見を逃さないことが成功への近道 私も若い頃よく言われたことですが、学生たちはポジティブに考えるようにして欲しいと思っています。たとえ研究の結果が絶望的でも「そこから何か見つけてやろう」という気持ちを持つことが大切だと思います。私たちの研究室では、「セレンディピティ(偶然に想定外のものを発見すること)」を意識して研究に臨んでいます。研究の成果というのは「この色の変化は何かおかしいな?」など、偶発的な現象から導かれることが往々にしてあります。そのようなヒントを見逃さないためにも、諦めない気持ちが必要不可欠なのです。自分にしかできないことを行う気持ちで これから私の研究室に来る学生には、「自分が学問を創造してやろう」という野心を持ってほしいですね。研究には個性が出ますし、結果が出るか出ないかも人によるところが大きいのですが、やはり「自分にしかできないことをやる」気持ちが重要だと思います。 埼玉大学には、基礎的な研究を行うのには申し分のない設備が揃っています。古川助教が言うように、この研究は「化学をツールにして自分を表現したい人」にはベストだと思います。これに思い当たる人はぜひ入学を目指していただきたいですね。message斎藤教授より受験生へ古川助教(左)と斎藤教授(右)Profile斎藤 雅一[さいとう まさいち]理学部 教授1991年 東京大学理学部化学科卒業1996年 東京大学理学系研究科博士課程修了1996年 埼玉大学理学部基礎化学科助手2002年 埼玉大学理学部助教授2009年より現職8SAIDAI CONCIERGE

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