TechTech~テクテク~No.26
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 しかしシャープでは、大学院で研究に使っていた真空装置を用いてDVD関連の部品を量産する担当に。がっかりもしましたが、3年間はとにかく仕事に打ち込み、4年目に退社を決心しました。そして、あらためて次にしたいことを考えたとき、やはり父の背中を見て育ったせいか、「経営」という言葉が頭に浮かんだんです。 ただその後、あるシステム会社の役員の方に誘われるまま転職するも、その人が2カ月後に退職……。自分の「人を見る目」のなさを嘆きたくなるような回り道も経験しました。そんなとき、本で偶然目にして興味を引かれたのが、企業の経営について外部から専門的な助言を行うコンサルティングの仕事です。一緒に働くことになる社内の人たちの魅力が決め手となり、ドリームインキュベータに入社しました。 以来、経営コンサルタントとして、様々な企業の成長戦略づくりや海外展開、ベンチャー企業の上場支援などに携わって12年。当初は新しい世界に戸惑いもありましたが、「課題を発見し、工夫を重ね、解決の道を探る」というプロセスは、実は研究でも経営でも変わりません。東工大時代に身につけた、「大きな潮流の中で特異点、つまり従来の基準とは異なるポイントを見極め、その背景や条件を分析する」というアプローチは、今の仕事でもそのまま応用しています。 また、東工大で研究に使っていた真空装置について取引先に助言したり、シャープで行った仕事の知識を生かしてメーカーの支援をしたり、これまでの経験が様々な形で役に立っています。企業のコンサルティングを行っていると、技術は専門家任せという経営者の方も多いのですが、その技術の優位性が会社の未来を考えるのに欠かせないという場合は少なくありません。そうしたとき、理系の知識があり、他の人が気づかない点に気づけることが、コンサルタントとしての自分の強みになっていると感じます。振り返ってみると、紆余曲折、試行錯誤のキャリアが、不思議と今につながっているんです。 「これがやりたい」という素直な気持ちに従って、新しいことに次々と取り組めば、当然困難も生まれますし、失敗もあります。ただ、そこにまだ見ぬ金脈があるかもしれない。失敗を恐れていては、新たな発見はできません。これからも好奇心を持って挑戦を続け、自分の世界を広げていきたいと思っています。 研究と経営には共通点がある理系のセンスを生かしたコンサルタントにchapter 3 :左:折に触れて読み返す、ドラッカーなどのマネジメントの名著。/中:仕事で使用するノートと万年筆。判型の大きいスプリングノート「ケンブリッジ」は、コンサルタントの間にも左:折に触て読返すドラカーどのネジント名著/中仕事使するート万年判の大いスリンノー「ケブリジ」コサルント間に愛用者が多い。/右:多くの人に会う仕事だからこそ、身に付けるアイテムにも気を配る。お気に入りの名刺入れも、大切なビジネスツールのひとつ。愛者がい。右くのに会仕事だかこそ、に付けるテムも気配おに入の名入れ大なビネスールひと飛び抜けた成果を出すには、独自の発想が必要になる。東工大で学ぶなかで、研究も人生も、何事も人と違うところに答えがあると強く感じました。略歴東京都出身1993年 東京工業大学第2類入学1996年 飛び級により、同大学院無機材料工学専攻に入学1998年 同修士課程を修了。シャープ株式会社入社 4年目に同社を退社し、一時、システム系の会社に在籍2002年 株式会社ドリームインキュベータ入社2014 Autumn13

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