TechTech~テクテク~No.27
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 食卓でしゃぶしゃぶを囲んでいると「肉は泳がせたほうが熱が早く通るだろう。これは対流熱伝達といって…」と説明が始まるような家でした(笑)。父は大学教授で、専門が化学工学。自宅に父の研究室の学生が集まって化学談義を繰り広げることもしばしば。化学への興味と研究への憧れを抱くのは自然な流れでした。小さい頃から大学祭にも遊びに行っていて、研究室見学で見たプラズマの光の美しさは強く印象に残っています。化学が身近な幼少期chapter 1 :東工大で化学工学を専攻し、博士号を取得後、後、東芝では一貫して、原子力事業に従事。入社当初は化学エンジニアとして設計部入社当初は化学エンジニアとして設計部部門に、現在は調達部門に所属し、福島第一原発放射性廃棄物処理プロジェクトにプジかかわり続ける鈴木翔さんに、現在までの歩みを聞きました。を創る、先輩がいる。“今” 大学では、関口秀俊教授の研究室に所属し、低温プラズマを使った新しい化学合成プロセスの解明に取り組みました。博士号取得を目指していた一方で、一日も早く社会に出て活躍したいという思いも強く、学部3年で飛び級して大学院に進学。研究や論文執筆など忙しさは増しましたが、やらなければならないというプレッシャーはむしろ、研究に打ち込む原動力になりました。 幸運なことに、従来より短い期間で博士号取得が可能になる博士一貫教育プログラムが進学のタイミングで新設されました。3~6カ月の留学が必須になっていたため、いつか海外で研究してみたいと考えていた私にぴったりでした。留学先の米・ミネソタ大学では、熱プラズマの研究を通して自己主張の大切さを実感しました。文化や習慣の異なる相手と物事を進めるには、求めていることをはっきりと言葉にしないと伝わらないんです。海外の研究環境や仕事のやり方を知れたことも、現在に活きています。 化学工学は、いわゆる「化学」のイメージとは、ちょっと違うかもしれません。研究室では、白衣でなく作業着でいることがほとんどで、化合物を効率的に生産・分解する仕組みをつくります。基礎研究を、実社会で活用できるように橋渡しする学問ともいえます。ですから化学エンジニアには、プラントを建造するような場合には、機械や材料、土木など様々な分野の専門家の観点を理解し、プロジェクト全体を俯瞰してリードしていく力が必要になります。 学生時代は、毎日異なる専攻の友人とランチを食べたり、経営についてなど他学科の授業を受講したり、とにかくいろんな視座を学ぶように心がけました。同じプラズマを研究テーマにする電気電子工学科と協同で勉強会をしたこともあります。化学工学ではプラズマを「どう使うか」を主眼としているのに対し、電気電子工学は「どう発生させるか」という方向からのアプローチ。同じ物事でも立場が違えば見え方が変わることを学ぶ良い機会になりました。大学での大きな収穫chapter 2 :専門の枠を超えた俯瞰力と視座を学ぶ東工大も訪れていた鈴木さん。本館前の広場でパシャリ。研究以外にも多くの刺激があった留学。歴代米大統領のモニュメントで有名なラシュモア山を見ようと、約10時間のドライブをしたことも。10Tech Tech

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