TechTech~テクテク~No.27
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アイデアはまず形にしてみるお風呂などの「水面」をタッチパネル化するAquatop Displayの仕組み(下図)。動作の認識に使うのは、奥行きを測れるKinectという深度カメラ。入浴剤で水を白濁させることで、映像を映しやすくする、水面の位置を検知し動作認識をしやすくするという2つの効果が得られる。水中に仕込んだ防水スピーカーを使って水を振動させたり吹き上がらせるといった3次元の演出も可能だ。Aquatop Displayプロジェクター白濁させた水スピーカーパソコン深度カメラ HCIは、Human Computer Interactionの略。直訳すれば「人間とコンピュータの相互作用」という意味だ。 これまでもコンピュータの入力方法やディスプレイの形状は大きく進化を遂げてきた。例えばごく初期のコンピュータでは、キーボードでひとつひとつプログラムを打ち込んでいたのが、やがてマウスなどによる操作に変わり、今では画面に触れて操作するタッチパネルや音声入力なども登場している。ともなって特別なデータセンターだけで使われていたコンピュータは、オフィス、家庭、さらに個人ツールとして活躍の場を広げることになった。大学院情報理工学研究科計算工学専攻の小池英樹教授は、こう付け加える。 「コンピュータの操作方法が感覚的にわかりやすく、シンプルなものになれば、より多くの人々の手によって人間とコンピュータの新しい関係がつくられていくと思うんです。だから私は、誰もが自然に使えるインターフェース、システム構築を目指してHCI研究に取り組んでいます」 小池教授の数ある研究テーマの中でも、長きにわたり続けているのが、コンピュータ・ビジョン(ディスプレイ)を用いて人間の動きを認識し、操作できるようにするVision-based HCIだ。  Vision-based HCIに採用するディスプレイについても、床や壁、天井や空中、霧や煙、発泡ビーズなど、新たな可能性を探ってきた。その中のひとつ、「水」をディスプレイに仕立てたのがAquatop Displayである。お風呂などの水槽に張られた水を入浴剤で白濁させることで、水面にクリアな映像を映し出し、その水面をタッチパネルのように使うことを可能にしている。操作に用いるのは、「水面から指を出す」「出した手をスライドする」「水をすくう」「水面を叩く」という入浴中ごく自然に行う4つの動きのみ。子どもでも簡単に操作することができ、水中に設置された防水スピーカーによって、水を吹き上がらせるなどの華やかな演出もあるAquatop Displayは、海外の展示会でも好評を博した。 「視認できる動作の種類を増やすことはできますが、数は少ないほうがユーザーも覚えやすく、処理スピードも早くなります。簡単な動作で、様々な操作ができるインターフェースづくりを心がけました。身ひとつで操作できて、湯船に浸かりながら水濡れの心配もなくビデオやゲーム、ネットなどを楽しめたら、そんなイメージを形にしています」 アイデアが浮かんだら可能な限り早く形にしてみる「Rapid prototyping」がこの研究室の信条。試してみることでこそ見えてくる問題点があるからだ。そこでトライアル&エラーを繰り返しながら理想に近づけていく。 「学生たちに『電気の性質は感電してみればわかる』などとよく冗誰もが簡単に操作できるコンピュータ2015 Spring3

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