TechTech~テクテク~No.27
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高度な情報処理技術で問題をクリア 大学院時代はVirtual Reality(VR/仮想現実)の研究室に所属していた小池教授。しかし、ヘッドマウントディスプレイなどの機器を身につけて仮想世界に入り込むVRより、実世界に情報を投影し、それを動かすAugmented Reality(AR/拡張現実)のアプローチのほうが、自然で魅力的に思え、その方面の研究に進んだ。 ARをテーマにまず取り組んだのが、Vision-based HCIだった。壁全体を画面にするような超大型ディスプレイの場合、タッチパネルなどの方法で操作するのは難しいが、Aquatop Displayのように人間の動作をカメラでとらえる入力方法なら、ライブ会場のような大空間に映像を投影し、観客の動作で操作することもできるかもしれない。あらゆる場所をディスプレイにし、表示と入力という2つの機能を融合させながら、かつてない体験を提供していく。 「パソコンのメモリが10年ほどで数メガが数ギガになるなど、技術は進化を続けています。現在の枠組みの中で1のものを1.1にしようと考えるのではなく、まずはゼロベースで実現したいことを考え、トップダウンでその方法を探り、まったく新しいものを生み出す。それが大学の研究者の使命だと思います」談で言うのですが、経験を積まないと研究のセンスも磨かれていかないと思うんです」 ここ数年は、Digital Sportsと呼んでいる分野にも熱心に取り組んでいる。ボールの中にCCDカメラを埋め込み、ボール視点からの映像を配信するというありそうでなかった機器を開発し、よりリアルなスポーツ中継への道を開いた。 「これは、アイデアとしては誰でも考えるかもしれません。ただ、競技中のボールは、例えばアメフトなら1分で600回転など、どれも激しく動いている。単に撮影するだけでは、空とフィールドの映像がめまぐるしく切り替わる、見にくい映像になってしまうので、必要なフィールドの映像だけを選び出し、見やすいものに処理していくわけです」 「特徴点抽出」という手法を使い、画面上の一定のものを目印にして、その目印の入った画像をつなぎ合わせるように画像を抽出・編集していく。また、回転しているボールでの撮影では、映像が斜めに歪むローリングシャッター問題も起きる。このような問題を解決し、アイデアを現実のものとするには、高度な情報処理技術が必要となる。 入念なインターフェース設計、高度なアルゴリズム開発、ものつくりの力など、ソフト・ハード両面の技術を活かしながら、多くのハードルを越え、独自のアイデアを形にしているのだ。 「アイデアが浮かんで、それを実行に移す人を、仮に100人に1人としましょう。また、実行の過程では必ず壁に当たりますが、それでも諦めずに解決まで真剣に向き合うのはさらに100人に1人ほど。最終的にアイデアを実現できるのは、10,000人に1人程度だと思います。そうして生まれたものであれば、他の追随を許しませんよね」コンピュータの 新しい価値をつくるAquatop Displayのスピーカーユニットなど、市販されていないものを自作する。研究室にはボール盤やオシロスコープなど製作用の機械・材料が揃う「PAC PAC」は、動作視認システムの成果を、ユニークかつわかりやすく示したゲームだ。テーブル状の大型液晶ディスプレイに表示される敵を、弾で打ち落としていく。人間の指をはじくという動作を画面上方に設置したカメラで検知する。画面のどの位置からでも参加でき、数十人の同時プレイが可能。多人数の動きを瞬時に解析・処理し、弾を発射するアルゴリズムづくりが。PAC PAC4Tech Tech

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