TechTech~テクテク~No.28
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 ただしそのゆがみは、「地球と太陽の間の距離が、水素原子1個分のさらに1/100変化する程度」という非常に小さなもの。そこでKAGRAには、微少な変化を誤差なく測るため、地面振動、熱雑音、量子雑音という3大雑音を可能な限り抑える工夫が多数盛り込まれている。 そのひとつが、岐阜県の神岡鉱山内部という“地中”への検出器の設置。この方法は世界でも例がなく、地面振動を抑える上で大きな効果がある。熱雑音に対しては、熱伝導率が高く、熱ゆらぎが少ないサファイアで反射鏡をつくり、マイナス253度まで冷やすことによって分子の振動を抑えるという方法で雑音を防いでいる。この施策も世界初の試みだ。そして量子雑音については、量子非破壊計測という最先端技術を搭載することにより、量子論が要請する、自由質点の位置測定の限界を超えることを目指している。 KAGRAには、最高の精度を実現するため、各分野の最先端技術が導入されている。宗宮准教授は研究の中心メンバーのひとりとして、検出器の設計を担当。レーザー光源、反射鏡といった構成パーツのうちひとつでも精度が下がれば、それが足を引っ張って全体の精度も落ちてしまうため、各機能・技術のバランスを見ながら整合性を取※複数の波を重ね合わせることで新しい波形ができる。 世界の物理学者が注目する重力波。その初検出を目指すKAGRAの建造は、日本の有力大学による共同大型プロジェクトだ。 「KAGRAは光が持つ干渉※という性質を利用した干渉計型の重力波検出器です。全長3kmに及ぶ真空トンネルの中で、レーザー光を何度も往復させて観測を行います。具体的には、まずレーザー光を出射し、途中で半透明鏡に当てて直進する光と垂直方向に反射する光の2つに分離。そして各方向とも同じ距離のところに反射鏡を置き、レーザー光が返ってくる時間の差を調べます(図参照)。すると、どちらの方向がどれだけ伸縮しているかわかりますから、その違いを見ることで重力波による空間のゆがみを検出できるのです」研究機器がKAGRAに搭載重力波信号をともなって干渉計から出るレーザー光を、検出器の直前で観測しやすい状態にする「アウトプットモードクリーナー」を研究しており、実機はKAGRAに搭載予定です。宇宙研究の新分野を拓く重力波の検出が、重力波天文学という新分野につながるというスケールの大きさに憧れます。学部4年生のときから海外で発表するなど、多くの機会を与えてもらえるのもありがたいですね。最先端技術で“3つの雑音”を抑える緻密な実験を重ね大型プロジェクトに貢献矢野 和城大学院理工学研究科基礎物理学専攻 修士2年(やの・かずしろ)約20cmInterview 01KAGRAで使用している反射鏡。反射性に優れているため、高品質のサファイアが用いられている。光検出器KAGRAの干渉計型検出器半透明鏡光の到達時間の差をチェックレーザー光源反射鏡1Tech Tech4

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