TechTech~テクテク~No.28
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っていく。全体設計は非常に重要な役割だ。 宗宮研究室では、さらに光学系パーツの技術研究、取得データの解析、将来を見据えた先端技術の開発なども行っている。 「アウトプットモードクリーナー」「信号増幅器」「光アイソレーター」といったパーツの開発では、実際の装置を縮小したプロトタイプをつくって検証を重ね、KAGRAに搭載するために最適化を行う。例えば出射されたレーザー光が光源に戻るのを防ぐ光アイソレーターの場合、KAGRA用のものは一般的なものとは異なり、テスト時のローパワーから実際の測定に必要なハイパワーまでの広いレンジで、透過する光の性能を変えないようにしなければならない。実験で試行錯誤を繰り返し、最適なバランスを探り当て、日本を代表するプロジェクトに提供するのだ。 一方、データ解析では取得データの波形を理論波形と照らし合わせながら、雑音なのか重力波なのかを見分けていく。一定の周期をもった雑音であれば判断はつきやすいが、不定期な雑音と本物の重力波を区別するのは至難の業だ。 「重力波という存在することが不明なものを認めることになるわけですから、学界も初検出の認定には慎重です。ですからダミーの重力波を出して、各国で重力波検出に取り組む研究者がそれを偽物だと見分けられるかといったテストまで行っている。ただ、重力波検出器の開発は大がかりなだけに、各国で国を挙げて1カ所で行っているところがほとんどで、最多でも米国の2カ所です。超新星爆発や中性子星連星の合体ではニュートリノやガンマ線も同時に発生しますから、それらが一緒に観測できればひとつの重力波検出器のデータだけで初検出と認められるのも不可能ではないでしょう。しかし、実際は難しい。そこで米国、イタリアなどほかの開発国と協力し、複数地点の観測で初検出につなげようという考え方が一般的です」 世界初の最新技術をいくつも搭載するKAGRA。そうした技術の数々を実装していくためには、地道な原理検証実験が欠かせない。そんな地道なプロセスのなかにも、面白い発見があり魅力的というのが宗宮准教授の考え方だ。 「子どもの頃から、何か新しい問題を見つけては解くという作業が好きでした。研究でも“日々、新しい課題を解決する”というプロセス自体が楽しい。また、国レベルの大規模研究に携わる喜びもあります。検出器の全体設計を行うために、これまで15年以上をかけて熱、レーザー、鏡、地面振動などの関連分野について学んできました。その分野に精通してくると、それだけ最先端の話題も理解できるようになります。各分野を代表するような世界レベルの第一人者と話をして問題解決のヒントをもらったり、アイデアを交換したりといった交流も本当に刺激的ですね」 「研究者の仕事は、新しいアイデアを出すこと」という宗宮准教授は、日頃から“考える”ことを大切にしている。 「アイデアは“考え続ける”ことで生まれます。僕の場合は、机の前にいるときより、飛行機や満員電車に乗っているときのほうがいいアイデアが浮かぶ(笑)。ただ、アイデアのままでは単なる思いつきですから、それをノートに式として書き付けるなど、実際に形にすることで、研究としての価値が出てきます。考えて、そのアイデアを形にして、さらに考えて…というサイクルを繰り返すことで思考が深まります」 幼い頃からドラえもんが大好きで、なかでもタイムマシンが一番のお気に入り。タイムマシンの開発には重力波が深くかかわっているということを知ったのも、重力波に惹かれた一因だ。 重力波の検出は、新しい視点で宇宙を見る「重力波天文学」の誕生につながる。超新星爆発の様子がわかれば銀河の成り立ちが明らかになり、中性子星の内部が見えれば核物理の研究も進むだろう。高校時代、新発見を通して社会の役に立つことを志し理系を目指した宗宮准教授は、いまや分野を超えた注目トピックとなった重力波の検出を通じ、物理学の世界を大きく変えようとしている。KAGRAは2017年に完成予定。人類が100年にわたって続けてきた努力が実を結ぶ日はもうそこまで迫っている。KAGRA内部にあるレーザー光を反射させる鏡は、この装置の中で冷却されている。熱による分子の振動を抑えるため極めて低温に保たれている。大岡山キャンパスの宗宮研究室内につくられた実験装置。KAGRAと同じものを、スケールを小さくして再現している。これで何度も検証実験を行う。重力波の検出が新しい世界を開く100年間未達成の課題に挑戦緻密な実験を通して大規模プロジェクトへレーザー光に含まれる重力波信号を増やして、雑音に負けないようにするための「信号増幅器」を開発しています。100年間達成されていなかった課題に挑むやりがいを感じます。昨年は現場でKAGRAの建設作業にもかかわりました。大規模プロジェクトに携わることができるのは魅力的で、外国人研究者との交流もいい刺激になりました。大学院理工学研究科基礎物理学専攻 修士1年片岡 優(かたおか・ゆう)反射鏡2Interview 025
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