TechTech~テクテク~No.29
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えれば設置場所などの制約も大きくなる。そこで化学的に電子の流れを生み出す材料をつくり、高温の場所に設置するだけでエネルギーを取得できるようにしたいと考えました。界面科学ではナノレベルで研究を行うのですが、物質は小さくなると不安定になり、高温になればさらに不安定さが増します。上手く安定した状態を保てるよう苦心しています」(松下准教授) 一方、磯部敏宏助教が力を入れているのが、多孔質セラミックスを使ったCO2分離技術の開発だ。セラミックスにナノレベルの孔を多数空けてスポンジ状にし、孔の表面をべーマイト(一水和アルミニウム酸化物)でコーティングすることにより、運動しているN2(窒素)とCO2の移動スピードの差を利用して分離を行う(図3)。この技術は、現在注目されているCO2の地下貯留や海底貯留、再利用といった計画の肝になるものだ。 「大気中にあるCO2を分離・回収するのはコスト面からも困難ですが、発電所などからCO2が放出される前に分離できれば、短期間でCO2の排出を大幅に削減できます」(磯部助教) これまでもポリマー性の分離フィルタなどはあったが、熱に弱く発電所などで使うのは難しかった。熱に強いセラミックフィルタならそれが可能になる。 「周期表のすべての元素を扱えるのがセラミックス研究の特徴です。有機材料や金属などの素材に比べると研究の歴史が浅いぶん、発見の余地が多いのも魅力ですね」(磯部助教)図3細胞壁細胞壁ガスの平均自由行程(a)N2CO2(b)細胞壁細胞壁ガスの平均自由行程N2CO2ベーマイト 松下祥子准教授の研究テーマは、エネルギー変換や、ナノ光学を利用した有害微量物質のセンシングなど。なかでも注力しているのは、化学反応を利用した新しい熱電システムの開発だ。 「半導体に熱を加えると、マイナスの電荷を持つ電子と、プラスの電荷を持つ正孔が界面に発生します。一般的な熱電発電では、半導体の一方を高温、一方を低温にし、電子と正孔の流れをつくり、それを上手くコントロールして発電を行います(図2)が、この方法だと温熱源のほかに冷熱源も必要になり、発電に必要なエネルギーも増 研究の過程で要になるのは、「ものつくり」と「評価・解析」だ。 「狙った機能を出すために、試料を細かくしたり、緻密に配列して狙った組成・構造の材料をつくる。このものつくりの部分は研究に欠かせません。また、研究を進める上では、つくった材料を評価するという部分も大切。日本の材料工学が世界をリードしているのは、評価技術が優れているのも理由の一つです。私がかつて米国へ留学して驚いたのは、向こうの評価装置がほとんど日本製だったことでした。日本では装置のねじ1本から自前で製作できる。当研究室でも、物体表面での水滴の挙動を調べるため、アルゴリズム開発なども含め、2年がかりで評価装置を自主設計しました」(中島教授)図2高温低温電子正孔電子の流れ電極電極電極n型半導体p型半導体新しい熱電発電とCO2分離法で温暖化を抑制Tech Tech4

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