TechTech~テクテク~No.29
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近年注目が高まるオートファジーだが、その歴史は半世紀以上前に遡る。名づけ親は、ベルギーの生化学者のクリスチャン・ド・デューブ博士。博士は細胞分画法※によって、リソソームやペルオキシソームといったオルガネラ(細胞内小器官)を発見。その後リソソームの持つ加水分解酵素によって同じ細胞内の細胞質成分が分解されている様を確認し、オートファジーを提唱した。しかし生化学的解析などの技術的問題から、そのメカニズムなどはわからぬまま、研究は何十年もの間、進展を見せなかった。 1992年、オートファジー研究を長い眠りから呼び覚ます人物が現れた。 東京工業大学フロンティア研究機構の大隅良典栄誉教授である。大隅栄誉教授は酵母を用いて、オートファジーの全容を光学顕微鏡(肉眼)で初めて観察し、電子顕微鏡でその過程を解明。翌年からオー トファジーにかかわる遺伝子の特定に取り掛かり、14の主要な遺伝子「ATG(AuTophaGy)遺伝子」を発見した。 もともと大隅栄誉教授が研究していたのは、酵母における液胞の働きだった。液胞は、植物では細胞全体の約90%を占めるにもかかわらず、1980年代当時「不活性なオルガネラで、細胞内にあるゴミ溜め」程度にしか考えられていなかった。「誰も注目していなかったから」と液胞を研究テーマにした理由を語る大隅栄誉教授は顕微鏡観察が大好きなのだと言う。液胞は、光学顕微鏡で見ることができる唯一のオルガネラだった。 大隅栄誉教授は、液胞がリソソーム同様に分解酵素を豊富に含んでいることから、分解する働きを持っていると予測した。「液胞に分解機能があるとすれば、飢餓状態でもっとも活発に働くはず。液胞内での分解を止めれば、何がどう分解されるのかわかるのではないか」と考え、あえて分解酵素が欠損している酵母を用意し、飢餓状態の液胞を観察していた。すると液胞内で、小さな粒々が激しく動き回っているのを確認。それは細胞質成分が液胞内に次々に取り込まれている様子であった。この発見から、電子顕微鏡などを使ってさらに研究を進めていく。オートファジーでは、まず膜が現れて、細胞質成分を包み込み「オートファゴソーム」を形成することや、それを液胞内に取り込んで分解しているという全容を明らかにしていった。調達しているのだろうか。 その答えを解くカギのひとつが、今回取り上げる「オートファジー」である。細胞が自らの細胞質成分(合成したタンパク質など)を食べて分解することでアミノ酸を得る機能で、細胞内の「リサイクルシステム」とも言われている。 例えば1日絶食すると、肝臓の体積は約7割に縮小するという。絶食時、肝臓では生命を維持するためにオートファジーが活発に行われているのである。数日間食べなくてもすぐに死んでしまうことがないのは、このためだ。脇役だった「液胞」への着目がオートファジー研究の扉を開けるCytoplasmic Components,Organelles細胞質成分細胞中に膜が現れ、分解対象となる細胞質成分を包み込んで二重膜構造体の「オートファゴソーム」を形成する。その外膜が液胞膜と融合し、内膜構造体「オートファジックボディ」が液胞内へ。液胞内の分解酵素が内膜を破壊し、内容物も分解される。オートファジーの仕組み膜細胞質成分液胞オートファゴソームオートファジックボディ[融合][分解]※細胞を壊して遠心分離機にかけ、オルガネラを種類ごとに集める方法72016 Spring
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