東北大学広報誌 まなびの杜 No.79
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04|まなびの杜 79号ことを人に分かる形で提示できます。また、探査の記録を残すことで、犬の能力を活用したデータの構築、今の探査でできないことの解析にも繋がります。 現在は、大型・中型犬が二時間以上装着し、探査を記録・配信できるサイバースーツを開発しています。国内外の現場で用いられる救助犬は、大型犬(体重三〇㎏程度)か中型犬(体重一五㎏程度)になります。サイバースーツは、犬の探査を妨げないように、体重の一〇%未満の重さの軽量でバランスの取れたものにしました。 また、救助犬の探査行動の記録・配信・可視化技術の開発をしています。サイバースーツには、カメラ、マイク、慣性センサ、GPS、データ記録・配信用の装置が搭載されていて、探査行動をmicro SDカードに記録すると共に、犬が見ている映像や、聞いている音声や、探査行動をリアルタイムに離れた場所にいるハンドラーに配信する機能を開発しています。携帯電話網とクラウドサービスを利用することで、離れた場所にいる指揮本部や、消防署からも犬の探査を確認することができます(図2)。可視化の技術としては、GPSが利用出来ない室内での探査軌跡の推定技術や、犬の見ている映像に映っている風景や遺留品を認識する技術(図3)、犬が人を発見した場所を地図上に自動マーキングする技術、犬の情動を推定する技術などを開発しています。 開発したサイバースーツの有効性は、日本救助犬協会の訓練に参加し実際の救助犬に装着して検証しています。また、ユーザーへの普及を目的に、日本救助犬協会と消防や、他の救助犬協会との合同訓練に参加し、成果の共有を行ってきました。新たな価値を創造する可能性 動物の行動を計測する技術の研究は、動物行動学やペット産業でもニーズがあります。犬は人類の有史以来の伴侶動物と言われていて、人間の生活に欠かせない存在です。犬の行動や情動を、犬に搭載したセンサから読み解く技術は、人が犬を理解するために欠かせない技術となります。二〇一二年度の国内データによると、犬と猫の総数は約二一二八万頭で、一五歳未満の人口約一六四九万人(二〇一三年四月一日)を超える数です。高齢社会や核家族のペット依存、高齢ペットの介護などもあり、潜在的なマーケットは非常に大きいと考えられ、今後ますます発展する研究領域と言えます。大野 和則(おおの かずのり)1976年生まれ現職/東北大学未来科学技術   共同研究センター 准教授専門/フィールドロボティクス関連ホームページ/http://www.rm.is.tohoku.ac.jp図3/被災者の遺留品の判定:救助犬の首もとカメラで撮影した映像から、遺留品が被災者の靴であると特定(信州大学山崎公俊グループと共同開発)図2/救助犬の活動を確認するインタフェース:隊員のスマートフォンやタブレットPCで、犬目線の映像、音声、探査軌跡をリアルタイムに確認

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