東北大学広報誌 まなびの杜 No.80
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ことが多く、開講期間中であれば、自分の都合のよい時間に学習することができます。講座は四週間程度の学習期間が設定され、一週間の学習時間は、一〜三時間程度です。また、講義を構成する各ビデオ教材は一〇分程度でコンパクトに作られており、学習者の集中力や、隙間時間の活用などへも配慮されています。 さらに、MOOCは学習コースとして提供されるため、学習内容が身についているかを確かめるための確認クイズや、課題(試験やレポート)、受講者同士で議論したりするための電子掲示板も用意されており、一方通行ではない学びが展開されています。そして、課題を提出して合格点に達すると、修了証も発行されます。大学の正規の単位ではありませんが、学習成果を修了証として形にすることができます。 MOOCでの学びは自由です。誰に強制されるものでもなく、自分の好きなように学ぶことができます。言い換えれば、つまらない、難しすぎると思ったら、何の不利益もなく、いつでもやめてよいのです。 私は、MOOCという新しい教育サービス 二〇一七年二月、東北大学はMOOC(ムーク)を開講しました。東北大学サイエンスシリーズ「解明:オーロラの謎」と、東北大学で学ぶ高度教養シリーズ「memento mori │死を想え│」です。講座の企画や制作サポートは、東北大学オープンオンライン教育開発推進センターが担当し、前者の講座は小原隆博教授(大学院理学研究科)、後者は鈴木岩弓総長特命教授(教養教育院)の協力を得て制作、開講されました。 MOOCは、Massive Open Online Coursesの略で、大規模公開オンライン講座と呼ばれるものです。インターネット環境があれば、大学レベルの教育を誰でも無料で受けられます。世界大学ランキングで上位の大学もMOOCを開講しています。また、非常に多くの受講生が集まるのが特徴で、受講生が一〇万人を超える人気講座もあります。代表的なMOOCプラットフォームとしては、海外の「Coursera」や「edX」が挙げられますが、日本にも、「gacco」「OpenLearning, Japan」「Fisdom」などがあります。 MOOCの授業はビデオ講義になっているでの学びに関心がある人だけではなく、中学、高校、そして大学での学びまで含めて、「やらされ感」の強い学習のまま学びを終えてしまった人や、そのような経験の中で勉強が嫌いになってしまった人にもMOOCをお勧めしたいと思います。そして、知らなかったことを知る楽しさや、学ぶことの大切さを実感してもらいたいと思っています。高校までの教科教育とは違い、専門分野の研究に邁進してきた大学教員の講義からは、たとえ、それが自分の興味関心とは異なる分野であっても、得るものが多くあります。 日本のMOOCは二〇一四年に始まったこともあり、講座数はまだ十分とはいえませんが、世界的には非常に多様な講座が開講されています。まずは、自分が興味・関心を持つ分野を受講してみるとよいと思います。しかし、MOOCは無料なのですから、これまでに自分が触れてこなかった領域の講座も受講してみることもお勧めします。世界で一流といわれる大学の講義でも、入学試験もなく、無料で受けられるのですから。また、大学進学を考えている高校生の皆さんは、進学先を決める際の参考にもなると思います。 MOOCは受講者が好きなように学んでよいのです。合格することだけが受講目的とは限りません。講義ビデオだけを見ることもあると思います。初めは、お試し感覚での受講でもよいと思います。その中から、自分が面白いと思える講義に出会えたとき、受講後には良質の映画を見終わった時のような満足感があると思います。ぜひ、MOOCの世界に足を踏み入れてみてください。 東北大学では、今年度もMOOCの新規科目開発を計画しています。また、「解明:オーロラの謎」と「memento mori │死を想え│」は再開講される予定ですので、ご期待ください。多くの方の受講をお待ちしています。八木 秀文(やぎ ひでふみ)1968年生まれ現職/東北大学オープンオンライン   教育開発推進センター 特任講師専門/教育工学   インストラクショナルデザイン関連ホームページ/http://mooc.tohoku.ac.jp/(オープンオンライン教育開発推進センター)八木 秀文◎文text by Hidefumi Yagiまなびの杜 80号|01大学レベルの教育を誰もが無料ですき間時間でも学べるコンパクトなビデオ講義「やらされ感」のない自由な学びMOOCで満足感のある学びを「教育」考│新世代へのメッセージ│MOOCで学びを楽しんでみませんか?図/MOOCの学習画面例東北大学で学ぶ高度教養シリーズ「memento mori ─死を想え─」(2017年2月開講)

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