東北大学広報誌 まなびの杜 No.82
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まなびの杜 82号|07最新の研究ラインナップ工学研究科・堀切川一男教授が第15回産学官連携功労者表彰「科学技術政策担当大臣賞(地方創生賞)」を受賞東北メディカル・メガバンク機構の山本雅之機構長が第12回柿内三郎記念賞を受賞横堀壽光名誉教授がギリシャで開催された第14回世界破壊力学会議において最高貢献賞を受賞大谷栄治名誉教授がThe Urey Awardを受賞久道茂名誉教授が朝日がん大賞を受賞08/2308/2509/0509/05離れた地域の植物間の生殖を妨げる仕組みを解明 ―「遺伝子重複」による新たな他者認識システム―本学大学院生命科学研究科の渡辺正夫教授、高田美信技術専門職員らのグループは、大阪教育大学、奈良先端科学技術大学院大学、東京大学、三重大学、チューリッヒ大学、横浜市立大学、忠南大学(韓国)との共同研究で、同じ種でも日本とトルコという離れた地域由来のアブラナ同士に生じる一方向性の不和合現象(受粉・受精を妨げる反応)を支配する、めしべ側と花粉側の認識遺伝子セットを明らかにしました。この仕組みは、自己花粉の認識に関わる遺伝子セットの「遺伝子重複」と「相互の機能喪失」によって生じたものと考えられます。この成果は、植物の交雑を制御する分野に新しい知見を与え、アブラナ科野菜の品種改良への応用が期待できます。本成果は、英科学誌 Nature の姉妹誌 Nature Plants 電子版に掲載されました。032017/06/27常識を破る、単結晶成長メカニズムを解明―形状記憶合金の量産プロセス開発で耐震分野に道筋―本学大学院工学研究科金属フロンティア工学専攻の大森俊洋准教授、貝沼亮介教授の研究グループは、京都大学、(株)古河テクノマテリアル特殊金属事業部との共同研究で、銅を主成分とする形状記憶合金の単結晶部材が量産できる製造プロセスを開発しました。本研究では、単純な熱処理による「異常粒成長現象」を引き起こすメカニズムを解明。さらに長さ70センチの単結晶棒材の製造に成功しました。この研究成果は、形状記憶合金の単結晶大型部材が量産できるという、金属学の常識を超える画期的なものです。実用面では、製造コストの飛躍的な低減、変形回復の特性の向上などの他、耐震性を高める特殊部材に道筋をつけました。本成果は英科学誌 Nature Communications 電子版で公開されました。072017/08/28癌治療へ、放射線やシスプラチンが効く機構を発見本学加齢医学研究所の安井明フェロー・本学名誉教授は、癌治療において放射線やシスプラチンが効果的に効く機構を発見しました。広く臨床で用いられている放射線やシスプラチンを使う治療は、DNAに傷を付け細胞死をもたらすのが目的ですが、DNAの傷を修復して細胞死を回避する機構は癌細胞も正常細胞にもあり、効果的な癌治療のためには、その傷が癌細胞で修復しにくいことが必要です。本研究では、最近の癌ゲノム配列決定で種々の癌細胞に高頻度に欠損していることが明らかになった特定の複数の因子、ヌクレオゾームリモデリング(NR)因子、が放射線やシスプラチンなどによるDNA損傷の修復に重要な役割を果たすことを発見しました。これらの因子を欠いた癌細胞は、とりわけシスプラチンに感受性になり、癌治療の前にこれらの因子の有無を調べておけば効果的な治療が期待できます。さらに、これらの因子の欠損が徐々に正常細胞に起きることにより細胞老化をもたらすという新しい細胞老化機構を提唱しました。本成果は、英国の Philosophical Transaction of the Royal Society (Biology) 誌に掲載されました。082017/08/29アルツハイマー病の原因遺伝子を推定―遺伝子"オオノログ"へ着目し絞り込み―本学大学院生命科学研究科の牧野能士准教授らのグループは、アルツハイマー病患者に特有のゲノム領域に含まれるオオノログという特殊な遺伝子に着目することで、病気の原因となる遺伝子を多数推定しました。本研究では、アルツハイマー病の発症と関わる脳での遺伝子発現量調査、マウスの遺伝子機能の調査を行い、原因遺伝子を絞り込みました。その遺伝子群は、神経に関わる機能を持ち、脳での発現量が高く、原因遺伝子の特徴を持っていました。本研究は、進化学的なアプローチを医学へ応用して原因遺伝子を推定した重要な報告であり、原因遺伝子の特定が困難なアルツハイマー病以外の病気への応用も期待されます。本成果は、 Molecular Biology and Evolution 誌電子版に掲載されました。042017/06/28

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