東北大学 理学部 地球科学系
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4地球の環境を地球深部探査船 「ちきゅう」現在のサンゴ礁(左)/サンゴ礁堆積物(右) 地球表面の70%は海洋で占められています。現在の海洋性地殻は1億5千万年前以降に作られ、深海底の堆積層には地球環境の変動が詳細に記録されています。この全記録を解読しようとするのがIODP(International Ocean Discovery Program: 国際深海科学掘削計画)の目的です。そのため、日本が中心となり地球深部探査船 「ちきゅう」が新造されました。現在はこの「ちきゅう」に加え、アメリカの掘削船「JOIDES RESOLUTION」、ヨーロッパの特定任務船「Mission Specific Platform」の3船態勢で研究が進んでいます。地球科学系はIODP発足時から理事として関わり、これまでに北極海、北大西洋、東赤道太平洋、タヒチ沖などの研究航海に参加してきました。 海洋には炭酸カルシウムの殻をもつプランクトンや珪質の殻をもつ単細胞の生物が生息しています。それらの生物群集は水温・塩分・ 栄養塩・光度などの環境因子に敏感に反応して変化します。この変化を活用し、海洋環境変動史の復元や地質年代を決定する研究は私たちの得意とするところで、IODPでも極めて重要な研究の一つです。 琉球列島は、世界で有数のサンゴ礁海域であり、北西太平洋におけるサンゴ礁の分布の北限に位置します。そのため、そこに生息するサンゴ礁生物群は、過去の環境変動に大きな影響を受けてきたと想定されます。なかでも、琉球列島の広域に分布する第四紀サンゴ礁堆積物は、氷期・間氷期に伴った海洋環境変動を記録しています。この堆積物に含まれる生物相(造礁サンゴ、サンゴモ、大型有孔虫などの群集組成)や堆積相の変化を調べることで、第四紀気候変動とそれに対するサンゴ礁生態系の応答を明らかにできます。この知見は、現在進行中の地球温暖化がサンゴ礁に与える影響の予測にも応用可能です。Faculty of Science, Tohoku UniversityIODPで海洋環境変動史を解読するサンゴ礁堆積物・生態系から海洋環境変動史をみる 現在の地球環境は、地球誕生から約46億年の悠久の時間をかけて自然が行ってきた「壮大なる実験」の結果です。地球環境を構成する岩圏(固体地球)・気圏・水圏・生物圏はお互いに影響を及ぼしあいながら、常に変化し続けてきました。近年では人類活動の結果として地球温暖化が進行し、様々な影響が起こることが懸念されています。しかし、人類が誕生する以前にも現在よりも温暖な時期や逆に寒冷な時期があったことが知られています。海洋や陸上に残された堆積物やそこに含まれる化石は、過去の地球環境の唯一の記録者です。海洋や陸上から採取した様々な試料を用いて、地球環境の変遷やその原因を解き明かし、現在および近未来の地球環境を理解しようとしています。10EARTH SCIENCE解読する

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