東北大学 理学部 地球科学系
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5東北大学理学部地球科学系1太陽系・惑星の起源と進化融 液コンドリュールの再現状態テンハム隕石中の衝撃溶融脈(隕石衝突時にできた断層)の薄片写真。緑円の部分を局所レーザー加熱装置(右上)で加熱し、走査型磁場顕微鏡(右下)で測定する。左:宇宙ダスト再現装置。 右上:固体物質を加熱・蒸発させ微粒子を作る。右下:透過型電子顕微鏡による微粒子の観察。微惑星衝突のようす。 隕石に含まれる数㎜の丸い粒はコンドリュールと呼ばれ、㎜サイズの極小の“マグマ”が宇宙空間で結晶化した証拠だと考えられています。コンドリュールは地球などの惑星に多く含まれるケイ酸塩を主成分とする真球状の結晶です。地上のマグマとの大きな違いは、宇宙空間では“浮遊した状態”で結晶化するということです。私たちは液滴浮遊加熱装置を開発し、宇宙空間でのコンドリュールの結晶化現象の再現に成功しました。これにより、浮遊状態では結晶化が極めて難しく融点より数100℃も温度が下がって初めて結晶化することや、これまでの常識を覆して、たった1秒でコンドリュール形成されることなどが明らかになってきました。 微結晶から小天体が生まれ、それらが衝突・合体を繰り返すことで小さな惑星そして大きな惑星へと進化します。衝突の衝撃によって高温高圧が発生し、惑星内の鉱物が溶解したり、高圧鉱物に変化したりします。そこに含まれる物質や同位体比をナノスケールで調べることで、高圧鉱物のでき方、衝突の起きた年代や衝突した微惑星の大きさがわかってきました。 私たちの住む太陽系の誕生初期、猛スピードで回転する原始の太陽は、周囲の電離したガス円盤や微惑星が磁力線で結合することで、その回転を弱めたと理論的に推定されています。これを実証すべく、私たちは走査型磁気顕微鏡と局所レーザー加熱装置を開発し、隕石中の磁石の性質を調べて、当時の磁力線の強さを推定することに挑戦しています。 46億年前の初期太陽系は、高温のガス円盤でした。それが冷えることで微小な結晶が生まれ、集まってはまた溶解して結晶化することを繰り返し、地球を始めとした惑星の起源物質が作られていきました。私たちは、様々な固体物質を加熱・蒸発させ、その蒸気を直接観察することで、隕石などに含まれるさまざまな形の結晶の再現、及び、その形成過程を調べています。0.00s0.02s0.04s0.06s0.08s1㎜(C)NASA結 晶左:試料を操作するマニュピレーター。人工授精にも  使用されているもの。右:衝撃で溶けた岩石からのオリビンの急成長。(C)NASA宇宙空間に浮かぶ“ミニマグマ”からのコンドリュール形成微惑星の衝突磁場が語る46億年昔の太陽系“太陽系最初の微粒子”の形成

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