東北大学 理学部 地球科学系
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9東北大学理学部地球科学系3生命の起源・進化・絶滅図1. 地球生命環境史:生物の大進化はなぜ起きたのか?この図の中にはいくつものなぞが含まれています。それらを私たちは解いています。安定同位体比の測定堆積物や、化石の元素組成を測定することにより当時の温度変化など、さまざまな環境変動を推察します。有機地球化学的分析(バイオマーカー)野外調査ボーリングコアサンプル入手堆積物から、有機分子を抽出します。得られる有機分子から元の生物と当時の環境の変動を推定します。フランス・プロバンス地方に露出する白亜紀海洋無酸素事変の地層計算・実験・理論明らかになった事実や仮説を参考に、それらが実際に起こりえるのか、どのように進行するのか、シミュレーションしてみます。生物事変(絶滅・出現)微化石の分析 中生代のジュラ紀から白亜紀にかけての時代は、活発な火成活動により、顕著な温暖化が進行しました。この時期の地球には両極に氷床が無く、海水準も現在より200m近く上昇していたと考えられています。また、この温暖化によって、世界の海洋の多くで酸素が欠乏し、有機物に富む“黒色頁岩”と呼ばれる堆積物がしばしば形成されました。このイベントは海洋無酸素事変と呼ばれており、海洋生物の大規模な絶滅を引き起こしたことが知られています。一方、この時期に形成された有機物に富む黒色〜暗灰色の堆積物(右写真)は、中東など多くの地域で石油の根源岩となっており、私たちの生活にも密接に関係しています。 現在、このような中生代の温暖化がなぜ起こったのか、そして、温暖化によって地球の環境や生態系がどのように変化したのかを調べるために、世界中で研究を進めています。 生物の大進化は、初期進化、真核生物の出現、動物の大進化、上陸、2つの大量絶滅、人間圏の形成の7つの生物事変で説明できます(図1)。これらの生物事変は限られた時間に集中して起きています。私たちは、このような生物事変がなぜ起きたのかを知るために研究を行っています。生物は、骨格と有機分子と痕跡を地層中に残します。また、当時の元素やその同位体比も地層中に保存されています。これらの情報を世界各地から採取した堆積岩から取り出して、酸素環境・気候・生態系の変動を明らかにし、大規模森林火災・大規模土壌流出・強酸性雨などの証拠をつかみ、最新鋭の機器を使って生物の大進化のメカニズムを解き明かします。全球凍結、酸素、大規模火山活動、小天体衝突が図1の2〜6の生物事変の原因として有力になって来ました。何億年も前の真実を知る喜びと未来を予測する醍醐味を味わえます。これらを明らかにするために、右図の手法で研究をしています。炭素硫黄サイクル大気酸素オゾン海洋微生物(有孔虫や放散虫)の微化石は、堆積物中から連続的に採集できるとても便利な化石です。化石の種類や数の変化を調べることにより、地層の年代や環境変化を明らかにします。酸化還元海水温生物の応答溶存酸素大進化のメカニズムを解き明かす地球温暖化に伴う環境変動と海洋生物の絶滅事変

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