東北大学 文学部 学部案内 2020年度入学者用
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 哲学(philosophy)という言葉は「知を愛する」という意味のギリシア語に由来しています。「知を愛する」ことは、人を愛することと同じように、誰にでも開かれた普遍的な営みです。実際、プラトンもアリストテレスも、哲学は単純な「驚き」から始まると述べています。もちろん、ただ驚いているばかりでは哲学は始まりません。その不思議や■を理論的に解きほぐし、物事の根本に■って考え抜くことが要求されます。そのために必要なのは、ソクラテスが実践したように、筋の通った議論を最後まで続けることだけです。その意味で、哲学は知的好奇心と理論的探究心を持つ者なら誰でも参加できる、「知」のマラソン・レースだと言えるでしょう。 私たちの研究室が主に扱うのはヨーロッパを中心とした西洋哲学であり、現在のスタッフの研究領域は、古代哲学、近現代哲学、科学哲学、生命環境倫理学と多岐にわたります。好奇心と持久力をそなえたみなさんが、観客ではなく競技者として私たちのレースに参加されることを期待してやみません。 言語学は、人間のことばそのものを研究して、「ことばとは何か、ことばはどのように働いているのか」という根本的な問いに答えようとする学問です。研究の対象とする言語の選択に制限はなく、日本語はもちろん、英語のようななじみのある言語から名前もほとんど聞いたことのないマイナーな言語まで、さらに手話も含めて、話し手の数の多さや政治的・経済的な力の優劣を問わず、すべて扱うことができます。個々の言語の研究をおこなう際には、その言語だけに注目することもできますし、歴史的変化や地域・社会階層・場面による変異、あるいは他の言語との比較を考慮するアプローチもあります。一方、人間の言語の普遍的な特徴を考察することもあり、最近では、ことばの理解や産出を司る脳の仕組みを解明して、「なぜことばが話せるのか、なぜことばを失うことがあるのか」という問いに答えようとする言語認知脳科学といった先端領域にも意欲的に取り組んでいます。 ことばへの強い関心と自由な想像力に富んだ皆さんを、言語学研究室は歓迎します。 倫理学専修では、ドイツとフランスの倫理思想を中心としてヨーロッパの諸思想を体系的ならびに歴史的に研究しています。とくに人間における生と死、自然と自由、自己と他者、文化と価値といった基本主題をはじめ、現代の文明と社会がひき起こす環境や生命の問題にもとりくみながら、人間とはなにか、人間はいかに生きるべきか、という初心の問いのもとに、人間存在の根本的な本質と全体的な構造を追究しています。そのかぎり、すぐれた意味において〈人間の学〉であるといえるでしょう。 研究を進めるうえで外国語(英語・ドイツ語・フランス語など)の読解能力が必要になります。それはたんに研究手段となるばかりでなく、思考力を鍛え、世界観や人生観を広げてもくれます。 私たちの研究室は哲学専修とともに合同で研究活動や諸行事を行っており、両専修の教員と学生の交流、全集や専門雑誌などの図書資料にも恵まれています。 心理学は心を科学する学問です。もしかしたら人の心が自在に読めるようになるという期待を持つ人がいるかもしれません。しかし実際はちょっと違います。心理学が目指すのは、心の仕組を明らかにすることです。このとき、沈思黙考して頭の中で結論を得るのではなく、データを集めて科学的な手続きによって明らかにしようとするのが心理学の方法論です。 データの集め方は様々です。最先端の測定装置を用いて脳の活動を記録することもあれば、南米まで出かけて現地の人と触れ合いながら、その生活を記録することもあります。実験・調査・面接・観察…心理学専修では、講義で知識を学ぶだけではありません。実際の研究方法を「心理学実験」「心理学研究法」「心理学特殊実験I・II」などのカリキュラムで、実習を通じて身につけてもらいます。具体的には、反応時間・フィールドワーク・ポリグラフ等々。おそらく初めて体験する現実の心理学に、新鮮な驚きと興味が湧くはずです。そして、これらのテクニックは卒業論文に結実し、皆さんの大学生活を締め括ってくれることでしょう。16Laboratory IntroductionPhilosophyLinguisticsEthicsPsychology研究室紹介■■■■■■■■■■■■

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