東北大学 医学部 2024
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医学部長石井 直人医学科長高瀬 圭流れが世界的にありました。ところが新型コロナが出てきて、公衆の健康をいかにして守るかとか、危機対応としてワクチンをいかに早く接種するかとか、従来の医学が向かっていた方向とは別のニーズが現れてきたわけです。人類が経験していないようなことが起きて、医学・医療が求められることもより幅広くなりました。従って、これからの医学科あるいは保健学科の学生さんに求められるのは、未知のものに対応すべく自分で問題を発見して解決し得る能力、またその意識の高さだというお二人の意見に100%賛同します。臨床現場を見て研究にも触れ将来への実感を伴いながら学ぶ̶̶その力を付けるために、東北大学医学部にはどのような環境がありますか。本間 知識を整理し正解を答えられるようにする部分は、医学部の専門科目でしっかり学んでいただけます。その次の、問題自体を探し解決することに関しては、保健学科では数年前に卒業研究の時間を倍ほどに増やし、知識の整理だけではなく研究にも触れ将来に役立てられるカリキュラムになりました。4年間の制約があり国家試験もあるため、他の学部と比べると専門科目がぎっしりと入っているような状態ではありますが、他の大学の保健学科に比べると、研究に触れることに多くの時間を割いているのが特色の一つです。高瀬 医学科でもまずは医師になるための保健学科長本間 経康教育が基本としてあって、それは最も欠かせないものです。東北大学ではかなりブラッシュアップされた講義を用意するとともに、十分な臨床実習の期間を設け、教育担当の下で実のある実習ができます。われわれの頃は1、2年の時に、いつになったら医学を学べるのだろうかと不安に襲われることもあったんですけれども、今は早期医療体験実習などにより、1年生の時から臨床医や研究者がどんなことをやっているか見て触れる機会があり、今学んでいる基礎医学が患者さんの役に立つ、必要な知識なんだと実感しながら学べるような工夫がされています。入学したら直ちに、6年後を見据えて学習意欲を高められるのが非常にいいところだと思います。石井 ほかに、医学科の3年時には20週間研究室に配属する基礎医学修練がありまして、研究室配属では日本の医学部で一番長いのではないかと思います。学部時代に自ら研究に従事し、答えが存在するかどうかも分からないことに取り組むというのは貴重な機会です。研究者に限らず、将来医師あるいは技師、看護師になる方たちも一定期間そのような研究に取り組むことは、先ほど話した自ら問題を見つけて解決する姿勢を身に付ける上で非常に有益です。そこが東北大の教育の特長であり、卒業生が高く評価されている理由の一つではないかと考えています。03Ishii, NaotoTakase, KeiHomma, Noriyasu医学・医療技術の急速な発展の一方で少子高齢化に伴う課題、新型感染症などの新たな脅威があり、医療従事者に求められる知識は増え続けています。予測困難な未来の医療を担う東北大学医学部を目指す高校生に向けて、大学時代に培うべき力、そのために用意している教育の特色、将来に向けた期待を、本年度新たに医学部長、学科長に就いた3人に語ってもらいました。答えのある知識の習得に加え自ら問題を見つけ解決する力を̶̶医療従事者に必要な知識が増加し医療ニーズが多様化する中、医学部の学生はどんな力を担う必要があるでしょうか。本間 一つは高校生の皆さんが勉強されてきた、正解と思われるものが分かっていることに対する勉強や知識を整理する能力です。保健学科の場合は4年間の後に国家試験でその知識を問われることになります。もう一つは、正解が今のところ分かっていないものへの応用力、対応力。医療の現場で患者さんと接する中では知識だけでは解決できない、正解が一つとは限らない問題もありますので、その対応力も培っていただく必要があります。高瀬 先人が築き上げた医学の膨大な知識を覚えて、医師としての能力を身に付けるのは、受験勉強に通じると思います。一方で、臨床でも基礎研究でも、ここまでしか分かっていないとか、ここから先は治せないとか、そういう限界に案外早く突き当たるはずです。その時に、世の中や患者さんが何を求めているのかというニーズを拾い上げる力、本間先生のおっしゃった、正解のないものを自分で問題提起して解決する力が求められていきます。石井 これまでの医学・医療は、例えばがんのような慢性疾患に関して、分子生物学やゲノム医学の知見を結集し、その患者さんに適切な個別化医療を構築しようという鼎 談人類の未知の問題に挑み医療の未来を拓ひらくために

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