東北大学 工学部 材料科学総合学科 研究室紹介
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Insider tipInsider tipUnited States of America東北大学は材料科学の分野で世界を牽引する存在です。特にスピントロニクスに関して、新田教授の研究室は最も優れた研究施設の一つだと言えるでしょう。また、研究に対する考え方にも魅力を感じています。もちろん東北大は理論研究において高い水準を維持していますが、実践的な研究にも非常に重点を置いています。例えば、学部課程の4年生でも自由に研究室に入り、高度な実験装置や豊富な材料を使って研究を行うことができるようになっています。これは、東北大学の伝統として非常にユニークなところで、自分が米国やヨーロッパで学んでいたときの体験とは大きく違います。このような環境は、実践的に研究を深めていきたい学生にとっては非常に有益です。私が専門とする「非磁性Pt/強磁性Co二層構造」の研究は、現在のコンピューターメモリシステムに革新をもたらす大きな可能性を秘めていますが、同時に最先端の設備、高品質の材料の確保、そして理想的な研究環境が求められます。加えて、技術革新を起こすためには、材料工学のトップクラスの研究者や専門家たちとの緊密な協力関係が重要であることはいうまでもありません。東北大学にはこれらを実現させるすべての要素が揃っているのです。成田史生教授と栗田大樹助教の研究グループは、植物繊維をナノレベルに解繊したセルロースナノファイバー(CNF)と蚕糸からなる複合糸の創製に成功、蚕糸単独の場合よりも2倍以上の縦弾性係数が得られ、引張強さや比強度も同様に増大しました。東北大学材料科学総合学科博士課程2年、GP-Spin program(スピントロニクス国際共同大学院プログラム)博士課程学生。パデュー大学にて材料工学の学士号を、グルノーブル工科大学とダルムシュタット工科大学にて材料科学の修士号を取得。現在、新田研究室に在籍、「Pt/Co二層膜構造におけるスピン軌道トルク」を研究している。東北大学との出会いは私の人生に大きな影響を与えてくれましたし、今後もそうあり続けると思います。博士課程に入学してからは、自分の知的好奇心がより一層高まっていることを実感します。最近は天文物理学や量子力学など、数学や物理学系の映像を見るのが楽しいです。自分の分野とは直接関係ないのですが、非常に刺激を受けますね。専門分野を深く掘り下げて探究すればするほど、異なるテーマをより深く理解でき、分野間のつながりを俯瞰的に捉えることができるのではないでしょうか。今は、この魅力的な知の冒険を楽しんでいます。東京オリンピック2020の開会式でUAE選手団が身に着けていたシルクスカーフは、 成田研究室が参画する、CNF蚕糸の研究開発を通じて、日本・UAE両国の友好の深化とシルク産業の復興を目指す「UAE-NIPPON友好シルクプロジェクト」で、日本とドバイ日本人学校の小学生が育てた蚕から製作したものです。いま、植物由来のCNFは新素材として注目され、強化材としての利用が検討されています。 CNFを食べた蚕でもっと細くて強いグリーンコンポジットファイバーを創り出し、 ナイロンやポリエステルなどの石油を原料とした合成繊維にとって変わる糸で製品を作り出すことを目指し、研究が進められています。(取材:2019年4月)Ryan Thompson刺激的な知の冒険の深みへ一方向植物ナノファイバー強化蚕糸の創製東京オリンピック2020のUAE選手団のシルクスカーフ

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