鳥取大学 大学案内2017
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47久郷 裕之医学部発明が日本の未来を創り、世界を変えていく。04File No.Super Teacher次世代高度医療推進センター 教授次世代高度医療推進センター長植木 賢MASARU UEKIhttp://www2.hosp.med.tottori-u.ac.jp/jisedai/1972年、鳥取県生まれ。鳥取県立鳥取西高等学校、大分医科大学医学部医学科卒。鳥取大学大学院医学系研究科修了。山陰労災病院消化器内科、日立記念病院内科などを経て、次世代高度医療推進センター教授に就任。2015年に同センター長を併任。日本内科学会、日本消化器内視鏡学会、日本臨床腫瘍学会などに所属。初発明は小学生のとき、スリッパにスポンジを貼って作った足で洗える風呂場クリーナー。趣味はテニス、水泳。5人兄弟。柔軟な発想で世界初の内視鏡を開発中! 日本人のがん死亡原因で多い大腸がん。早期発見には内視鏡の検査が有用だが、挿入に伴う苦痛を理由に避ける患者も少なくない。大腸は長く曲がりくねっているため、人間の手の力で無理に内視鏡を押し込むと大腸が伸びて痛みが生じ、最悪の場合は薄い腸壁を破り、患者が命を落とす危険もある。 こうした患者の負担を減らし、受診率を高めようと「痛くない内視鏡」の研究開発を進めているのが植木賢教授のチームだ。 現在、取り組んでいるのは内視鏡の先端につけたバルーンを空気の力で伸縮させ、尺取り虫のように腸内を自走させる「先端駆動式」。腸壁にかかる圧力を色と音で知らせる極小のキャップ型センサーと、320度の広い視野で観察できる全天周レンズを搭載し、製品化すれば世界初となる。この新型内視鏡の研究は経済産業省の補助事業に採択され、大手化学メーカーなどが参加して開発を進めている。3つのテーマの中でもとくに、圧力を知らせるキャップ型センサーは、2018年の市場投入を目指している。 元々の出発点は医学生のとき、大腸の内視鏡検査を受ける患者が涙を流して痛がる様子を目にしたことだった。後に、内視鏡を汽車に例え、痛みの原因を明らかにした。従来の内視鏡は駆動車両が最も後ろにあるため、脱線しやすいと考えることができる。つまり、手元で操作し、後ろから押し込む大腸内視鏡では先端がコントロールできないため、腸が伸びて痛みが生じるのである。逆に、汽車の先頭が駆動車両のときは脱線しにくい(腸を伸ばしにくい)ことに気づき、先端駆動式の内視鏡を思いついた。さらに、空気の力で自走するアイデアは玩具の鈴落としから閃いた。 「日本の技術力があれば高い安全性を実現できる」と、工学部や農学部と連携しながら研究開発に努め、多数の特許も申請中だ。世界に誇れる内視鏡システムが完成すれば、大腸がんの死亡減少に役立つことは間違いない。人材育成の未来モデルとして可能性を広げる「発明楽」。 長年にわたり、医療機器の研究開発に従事する。その経験から「発明は才能ではなく技術だ」と悟り、算数の四則計算になぞらえたユニークな切り口で発明のコツを伝える「発明楽」を提唱している。 院生の講義にも採用されている発明楽は、医療機器の開発や創薬などにチャレンジする人材の育成に役立つと文部科学省の補助事業となり、2013年には「地方大学の特色あるプログラム10選」に選定された。 その成果はすでに現われ始め、耳鼻科で使われる耳の穴をのぞく器具の耳鏡を、歯科口腔外科と協力して皮膚にやさしいシリコン製で開発しようとする大学院生も誕生した。市内の小学校から依頼されて出前授業もスタート。子どもたちに発明のワクワクする楽しさを伝えている。 近年、自動操縦の自動車や掃除ロボットが出現しており、今後は、医療機器もフルオートマティックになる時代に突入すると考えられている。日本は世界最先端のロボット技術を誇り、これからは医療にも応用することで機器産業をリードしようとしている。世界に先駆けて医療ロボット、医療機器を開発する拠点を築き、世界の患者様に役立つ製品を届けようとチャレンジを続けている。 子どもの頃から発明が大好きだった。あの頃と変わらない少年のような純粋さが日本の未来、そして世界を変えていくことだろう。植木 賢

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