鳥取大学 大学案内2017
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76生薬の栽培は、これからの日本農業の新しい旗手? 顔や腕が年中、日焼けしている。実験農場や近隣の野山、田畑に出向いて植物の生長や生態に付き合う野良仕事は多い。学科の中でも「国際乾燥地科学」コースを担当。アフリカのウガンダやタンザニアなど世界の乾燥地域へ年に数回は出向いて調査するなど、体を動かすフィールドの広さもさることながら、取り扱う研究テーマも幅広い。 とくに漢方薬などの原材料となっている生薬や機能性作物の栽培技術の確立へ向けた研究は、大きな柱となっている。「主に中国などからの輸入に頼っている生薬を、もっと国内で栽培し供給できるような栽培体系を研究中です」と、西原英治准教授。 手がける生薬の種類は、甘草(カンゾウ)、オタネニンジン(朝鮮人参)を中心にオウレン、マオウ、ハンゲ(カラスビシャク)など多数。農家の高齢化などによって増える耕作放棄地を利用した付加価値の高い作物づくりを考えても、生薬の栽培は今後の日本の農業にとって大きな光となる可能性を秘めている。 生薬に含まれる薬効成分と栽培条件との関係から、より有効的な栽培法を植物工場で見つける研究も行なっている。土壌や当てる光の波長など、人工的に栽培環境を整えると、季節や天候に左右されず、無農薬で安全な品質の作物を安定的に作ることが可能になるかもしれない。それにしても植物を相手にすることは「実践と時間のかかる地道な作業です」。自分の栽培経験と農家の現場から。 「うちの研究室では研究に当たってフローチャートを作るんです。そのためには課題と課題解決に向けた方向を探るために多くの論文をいっぱい読まなくてはいけないでしょ」。必ず求められる現場での実践と研究との融合性を重視する。 鳥取大学・乾燥地研究センターの砂丘ほ場でいろいろな園芸作物の栽培に没頭した。もともとは、土壌学に関心を寄せたが、それだけでは納得できなかった。 砂丘地・乾燥地を想定して「1年中、点滴灌漑(てんてきかんがい)を含むいろいろな潅水方法を用いていろいろな園芸作物を栽培していました」。 その後、アレロパシー(※注)の観点から作物の連作障害のメカニズムを調べたり、農産廃棄物を使った炭化物での土壌改良にも研究のすそ野を広げる。ただ、そのような取り組みの中で大切にしているのは「農家さんに問われてくることはすべて耳を傾ける。農業のための農学。国益に適うことは、すべてやっていく」が持論だ。現場を知らずに、どうする?実際の動きを重んじ、そこから“農”の新しい課題へ真摯に向き合っていくこと。「いまの農学は、理学っぽくなっている」傾向を感じながら、いつも自身は日焼けする現場に向き合う准教授だ。 研究室(乾燥地作物栽培学研究室)では4つのキーワードを掲げている。①自調②自考③自発、そして④スピード感。ここで解釈は広がる。ただ、おのずからの「自」(地)を社会に生かすことを、ここで学んでもらいたい、という准教授の強い思いが表れている。※注 ある植物から(とくに根から土中に)出る化学物質が他の植物や微生物、昆虫や小   動物に対して阻害的に、あるいは協調的に影響を及ぼす作用や現象。07File No.Super Teacher鳥取大学農学部生物資源環境学科 准教授西原 英治EIJI NISHIHARAhttp://staff.muses.tottori-u.ac.jp/nishihar/1968年、神奈川県生まれ。博士(農学)。米国・アイオワ州立大学農学部(主)と園芸学部(副)を卒業後、鳥取大学連合農学研究科修了。全国共同利用研究施設の同大・乾燥地研究センターに学び国立研究開発法人・農業環境技術研究所、新潟県園芸研究センターなどを経て2006年、鳥取大学へ。「日本には昔、いっぱいあったのに廃(すた)れていく伝統作物が好きなんです」。それぞれの地域に根付いてきた作物とその再生に深い興味を抱いている。どこでもドアが開ける農学へ。いつも現場に寄り添って行動したい。

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