鳥取大学 大学案内2018
34/94

2018 TOTTORI UNIVERSITY34地域経済を再生する“生きた税金の使い方”とは? 道路か、ハコモノか、はたまた地域活性化に尽力する人材育成か。人口減少・少子高齢化にあえぐ地方を再生させるため、地方自治体は一体どこに税金を投入すべきなのだろうか。地域経済学を専門とする多田憲一郎 教授は、京都府庁に勤務していたとき、京丹後市弥栄町内のひとつの集落で道路の拡張工事を行うという事業を担当した。当時その地域は住民のほとんどが高齢者という限界集落で、「この工事に一体何の意味があるのか。地域のニーズを全然見ていない」と矛盾を感じた。 工事は雇用を生み、町は一時にぎわうかもしれない。しかし工事が終われば、元の“過疎のまち”に戻る。「もっと地域の未来が創造できるような税金の使い方があるはず」。中山間地域における行財政のあり方と、それによってどのような地域経済を築き上げていくのか、我々はもっと深く考えていくべきなのでは。胸に芽生えた問題意識から、研究者として進むべき道が見えた。住民主導の活動が地域の未来を創造する。 原点は、小学生の頃に抱いた故郷への思い。両親に連れられて大阪の日本万国博覧会を訪れた際、太陽の塔や各国パビリオン、遊園地などが建ち並び、大勢の人でにぎわう都会を目の当たりにして、故郷との差に衝撃を受けた。「どうしたらいいんだろう、と思いました。小学生ながら『地方の人口を増やすには』というテーマで新聞に投稿したこともあります」。 大学の進学先に悩んだときもこの思いが蘇ったという。地域経済の活性化が人口増加につながるのではと考え、経済学部へ。「今は若者が将来の夢を持ちにくい時代。だけど、“なんか気になる”というものを無視しないで、向き合って深めて自分のやりたいことを見つけてほしい」と学生たちにエールを送る。 教授は、これからの地域振興は“内発的発展”がカギと考える。例えば岡山県真庭市では、企業経営者や公務員、医師など様々な職業人が集まって地域づくり団体「21世紀の真庭塾」を発足、まちなみの保存・再生、地元林業を活用したバイオマス発電など数多くのムーブメントを起こしている。住民発のそうした動きに市役所も賛同し税金を投入、地域が元気になっているのだ。「では、こうした動きが生まれる条件とは一体何なのか。私はそれを探っていきたい」、研究への情熱は高まる一方だ。進む人口減少・少子高齢化その大命題に地域経済学から切り込む。1960年、鳥取県生まれ。修士(経済学)。鳥取県立倉吉東高等学校卒。86年、京都大学経済学部経済学科卒業後、京都府庁に入庁、公務員としての経験を積む。96年、京都大学大学院経済学研究科博士課程修了後、岡山商科大学法経学部へ。04年、同大法経学部教授。岡山県新庄村と地域づくり連携事業の協定を結び、学生とともに地域調査と政策提言に取り組む。14年、鳥取大学地域学部教授。座右の銘は「凡事徹底」。Kenichiro Tada地域学部地域学科地域創造コース 教授多田 憲一郎01Super Teacher

元のページ  ../index.html#34

このブックを見る