筑波大学案内 2025
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26 皆さんは、社会学という学問に対してどのような印象をお持ちですか。何となく堅い感じがするけど何をしているのかわからない、貧困・教育・ジェンダーのようなSDGsに掲げられている社会問題について議論していそう、こうしたイメージがある方には、ぜひ社会学の柔軟性を知っていただきたいです。 メディアで目にするような社会問題について考えることも社会学ですが、それは社会学で取り扱う分野の一側面にすぎません。「SNSはなぜ流行しているのだろうか」「どうして人前で話すときに緊張するのだろうか」このような日常生活の中で浮かぶ疑問も、社会学で考えることができる問いの一つといえます。ですから、社会学は私たちがそれぞれ関心のある問題に沿って開かれており、他者と関わる中で疑問に感じていることすべてがその研究対象となります。 筑波大学社会学主専攻には、私たち自身の問いを探究するために欠かせない環境が整っています。原則どの授業も受講可能ですので、社会学類で4つの専門分野を学べるだけでなく、他学類の知識も得ることができます。問いに一見関係がなさそうな分野でも、実は重要なつながりがあったり、解決のためのヒントをもらえたりすることが多々あります。先に挙げた貧困・教育・ジェンダーの問題は相互に関連しており、例えば、貧困を考えるときには教育やジェンダーの視点も必要になります。また、様々な学問に触れることで、問題関心の幅を広げることができる点も魅力です。 私自身、入学当初は子どもの貧困に関心がありましたが、現在は摂食障害についても興味があります。4年間かけて一つの問いを探究し自分なりの答えを出す面白さを、私たちと一緒に体験してみませんか。 「恋愛も政治ですからね」。先日、ゼミの先生の言葉に耳を疑いました。しかし実際、意思決定を巡る人と人との駆け引きであるそれは、紛うことなき政治です。周りを見渡せば、流行りのアニメでさえ、政治的な営みに溢れています。与えられた環境下で登場人物同士が何かしらの合意形成をしていく、という筋書きそのものがすでに政治的です。「あの子のハートを掴む」「全国制覇」等それぞれの目標があり、一方ではライバルの存在や遠征費の不足といった環境の制約もある中で、人々は選択を繰り返します。仲間と協力するにせよ、独裁的にエゴを貫くにせよ、暴力を行使して邪魔者を駆逐するにせよ、どれも背景となる利害関係や権力構造を反映しているのです。「普段からそんな事を意識するなんて変態だ…!」とお思いですか?いえいえ、あらゆる事象の背後に多かれ少なかれ権力作用が働いています。知らずに権力に踊らされていたら、口惜しいではありませんか。 例えば、少し前の話になりますが、東京オリパラ開催是非を問うNHKの世論調査において、2021年2月調査から回答の選択肢が変わっていたことをご存じですか?「開催」「中止」「さらに延期」の3択から、「これまでと同様に行う」「観客の数を制限して行う」「無観客で行う」「中止」の4択になったのです。知らなければ、調査結果を見て「開催支持の人が増えている」と誤解してしまいますよね。これは、メディアによる政権への忖度が疑われる例ですが、世の中には他にも様々な権力が存在します。大企業、学校、社会制度、密約…。 ここまで読んで「へえ〜面白そうじゃん」と思ったアナタは、政治学に向いていますよ!現状に疑問を持つ力、社会の構造を把握して改善につなげる力を、一緒に身に付けませんか。縄野 洸(政治学主専攻) 社会学類の法学主専攻では法学を中心に学びますが、実は、他の大学の人に「私は大学では社会学類に所属し、法学を専攻しています」と言うと、ぽかんとした顔をされることがあります。そし、「法学部とは違うの?結局何を勉強しているの?」と聞かれることもあります。たしかに社会学類で学ぶ法学は、法学部で学ぶ法学とは少し違うかもしれません。私は、「社会学類で法律を学ぶ」ことの強みは、様々な学問とのつながりの中で法律を捉えられることだと思っています。 社会学類では、憲法や民法、刑法などたくさんの法学の授業が開講され、法学主専攻の学生はこれらの授業を中心に履修を組んでいきます。加えて、社会学類の他の専攻の授業や他の学類の授業も履修できるので、法学の枠を超え幅広く興味のある学問に触れることができます。私は法学の考え方の面白さに惹かれ法学主専攻に進みましたが、自身の経験から、政治学の分野にも興味があります。そのため政治学の授業も積極的に履修しており、法学の授業と紐づけ、今、社会学類で有意義に学びを深めることができています。 また、私が所属している憲法ゼミでは、学生が各々憲法に関する諸問題を取り上げて研究を進めます。福祉、安全保障、テクノロジーなどトピックは多岐にわたります。法律が私たちの日常の多くの場面と密接に関わっていることを再認識するとともに、多様な視点を持つ他の学生と議論を行うことで、自分の知見が深く、そして広くなっていることを実感しています。 私の捉え方はほんの一例で、法律へのアプローチの仕方は本当に様々です。ぜひ、社会学類の法学主専攻で、あなたの興味と法律を結び付けた学びを深めてみませんか。 社会学類では、私たちが生きていくうえで切り離すことのできない社会で発生する様々な事象を、多角的に分析する視野を獲得することができると考えます。例えば、電気料金の値上げについて考えてみても、その背景にはどのような出来事が存在しているのか、その手 続きは正しくなされているのか、その影響を受けて国家、あるいは消費者はどのような対応 をするのかなどといった、いくつもの異なる切り口があります。社会学、法学、政治学、経 済学を複合的に学ぶことで、現代を生きるうえで必要な物事を柔軟に考え俯瞰する力を伸 ばすことができます。 経済学という分野は、「限りある希少な資源をどのように分配するのがよいか」について考える学問です。このように聞くとお堅い分野のように思えますが、私たちの身の回りに経 済学は存在しています。一日のうち何時間を睡眠に充てるべきか、近所のラーメン屋はなぜ 営業時間が長いのか、スーパーで1,000円分買い物するとき最も幸せを感じる組み合わせは何かなど、生活のいたるところに経済学的な考えは用いられています。そして私が思う経済学の強みは、今まで述べた様々な場面での選択の合理性について、感覚的にではなく数学を用いて明示的に判定することが可能である点です。もちろん経済学すべてが数学的なものではありませんが、人々の行動が最適か否かを、数字を用いて明らかにすることは、経済学の面白さの一つだと私は考えます。 私は現在、計量経済学と、ミクロ経済学を学ぶゼミに所属しており、現実社会の実問題に経済理論をどのように応用することができるかについて、学生同士や先生との議論を通して理解を深めています。また、複数のゼミに所属することで、広く知見を得ることができ分析の手法を増やすことができるのは魅力的です。 これを読んだ皆さんが、社会学類に少しでも興味を抱くことを願っています。谷本 啓(経済学主専攻)原 悠子(社会学主専攻)難波 光(法学主専攻)

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