筑波大学案内 2025
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卒業生からのメッセージ42 障害科学類をご案内する本ページへようこそ!ご覧いただき、ありがとうございます。「障害科学」というと、どういう分野なのか、イメージが湧きにくいかもしれません。様々な学問領域の中では比較的新しく、「障害」というものを教育学、心理学、生理学、社会福祉学等を複合させて考える分野です。その土台として特別支援教育(特殊教育)学が歩んだ歴史がありますが、「障害科学」「特別支援教育学」「社会福祉学」の3つのモデルを中心に学ぶことができるよう科目が設置されています。 学生のみなさんは非常に柔軟な発想や思考を携え、大学生活を楽しみに入学されることと思います。「障害」というと、一般的には深刻で辛い側面を思い描かれることが多いと思いますが、日本のように少子高齢化社会を迎えた成熟した社会では、頭を柔らかくし、弱いところだけでなく強みに注目し、逆転の発想で世の中の仕組みを変えたり、問題解決をしたりする人材が必要になるでしょう。そして、この分野の学びには、相手の立場もよく理解できるような資質を持っていることが大変重要です。 障害科学類の4年間では、障害についての知識が深まるとともに、人間を観察する力や、様々な事象を多側面から捉え思考する力が身につくと思います。大学生活においては、健康で思う存分に学び、今しかできない経験を積んでほしいと願っています。 私は学部卒業後、国家公務員総合職として法務省矯正局に入省し、現在、霞が関にある法務省で勤務しています。国家公務員総合職とは、キャリア官僚とも呼ばれ、政策の企画立案をしたり、法案の作成や予算編成など国の行政の中枢を担う業務に携わり、中央府省庁の幹部候補として働きます。法務省矯正局は、犯罪や非行をした人を収容し、再犯防止など国民の安全や安心の実現に取り組んでいます。 入省後の3年間は、少年院と鑑別所で教官として勤務しましたが、そこでは障害科学類での学びが大いに活きたと感じています。子どもの非行の背景に2018年に訪問した米国オハイオ州立大学での研修の様子。州内の特別支援学校やバリアフリーでアクセシビリティの高い博物館等を見学しました。は、発達障害や、摂食障害などの精神疾患があることも多く、福祉的支援に繋げる必要があることも多いからです。心理学や教育的観点に加えて、福祉的な観点から目の前の子どもと向き合えることは自身の強みになっています。成人犯罪に関しても福祉的ニーズは高く、これまでの罰を与えるという考え方だけでなく、社会復帰後の就労支援など再犯防止が重要だと言われています。 様々な仕事がAIに置き換わり、想像(創造)力や個の人間力、多様性への理解が求められる現代、当事者の生の声を感じながらの障害科学類での学びや障害分野の最新の研究や考え方の理解、多方面で活躍する先生方や素敵な仲間との出会いはきっと将来の大きな財産になるでしょう。黒澤 由子(令和元年度卒業)宮本 昌子

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