筑波大学案内 2025
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50プローチが求められています。生物資源学類では、動植物から微生物に至るまでの多様な生物資源を理解し、地球規模から分子レベルの課題まで、広い視野と高い専門性を持って取り組むことができる人材の育成を目指しています。そのために、幅広い分野の授業に加え、野外や農場での演習・実習、室内実験、海外インターンシップなど多くの科目を開講しています。また、学類に在籍する留学生が多く、留学する学生も多い国際的な学類です。 本学類で皆さんが楽しく学び、社会に貢献できるような人材に育っていくことを期待しています。教職員一同、皆さんのご入学をお待ちしています。生物資源学類長内海 真生農林生物学コース 大野 翔平  私は子どもの頃から自然が好きで、高校時代は生物、とくに生態学に興味がありました。そこで私は、幅広く自然科学について学ぶことができる生物資源学類を志望しました。実際に1・2年生の授業では、農学に関する多様な学問分野を幅広く学ぶことができました。私はいろいろな講義や実験・実習を履修しましたが、とくに2年生で受けた「生態学」の講義に出てくる先生が面白く印象的でした。そこで私は植物の生態を学ぶ楽しさを改めて感じ、3年生になってその先生の研究室がある農林生物学コースを選びました。 私は卒業研究で、茅場(茅葺き屋根の材料であるカヤを採集する草地)に生育する希少植物について、外来種の侵入に対してどのような生存戦略をとっているのかを研究しています。世界の共通目標であるネイチャーポジティブを実践するためには、いま目の前で起きている生物多様性の課題に対する具体的な行動が必要です。私は研究を通して生物多様性の損失を食い止め、地域の豊かな自然を次の世代につなげたいと考えています。 私が最も大事にしてほしいと思うことは「何か一つのことに根気強く向き合う」ということです。この何かは学問に関わらず、自分が大切だと思うことなら何でもよいと思います。そして、最終的に「これだけは」と言えるものがあれば、その経験は社会に出て独立するときに、自分自身を肯定的に支えるアイデンティティになると思います。皆さんが生物資源学類で心惹かれるもの見つけ、充実した資源ライフを送ることができることを期待しています。環境工学コース 佐野 倫子  当初の私ははっきりと何を学びたいかが決まっていなかったのですが、ぼんやりと「食」に興味があったことから、最初から専門を決めず、且つ食に関する知識を学べる場所として筑波大学生物資源学類への進学を決めました。1・2年次は、生物資源学類の幅広い授業を受講することで、様々なアプローチで食に関わることができるということを学びました。そして、これらの学びを通して私は工学的な視点から食にアプローチする学問を追求したいと考え、環境工学コースを選択しました。 卒業研究では、マグロの美味しさを蛍光という光を用いることで簡易に推定する手法の開発を行っていました。マグロを最も美味しいタイミングで食べるには、鮮度と熟成のバランスを知ることが重要とされています。熟練の職人さんはこのバランスを五感によって判断していますが、残念ながら素人には難しい問題です。私はこの手法の開発により、誰もが職人の力を手に入れることができる可能性に魅力を感じたため、この研究を始めました。研究を行う過程では、工学的な知識はもちろんのこと、生化学等の工学とは離れた知識もフル活用して研究を行いました。それまでに勉強してきた幅広い知識が活かされた瞬間であり、幅広い知識によって得られる広い視野により、様々な可能性を検討する重要性を学びました。 広い視野は困難にぶつかった際に、私たちにあらゆる解決策を提示してくれます。生物資源は、私にとって正に広い視野を提供してくれた場所でした。是非、皆さんも4年間で自分の視野を存分に広げてみてください。生物資源学類を志す皆さんへ 2023年11月、世界人口が80億人を超えたと国連から発表がありました。人間も他の動物と同様に、生きていくためには食べ物と水、そして生活できる環境が必要です。今後も人口は増えていくことから、食料の問題を考えなければなりません。その他、気候変動に伴う環境変化、環境維持・保全の問題にも直面しています。これらの課題解決に取り組み、持続可能な社会を構築していくためには生物資源学の考え方が必要で、農学や森林科学、応用生命化学、環境工学、社会経済学などの分野からの多面的なア応用生命化学コース 野村 結南  私は、地球温暖化による気候変動が引き起こす問題、とりわけ食料不足の問題に興味があり、農学について幅広く学ぶことができる生物資源学類への入学を志しました。 幅広い分野の授業や実習を受けていく中で特に興味を持ったのは、微生物の分野です。目に見えないほど小さな微生物が、温暖化などの地球規模の問題を解決する可能性を秘めていることに魅力を感じました。そこで、微生物について深く学ぶことができる応用生命化学コースを選択しました。 卒業研究では、マメ科植物と根粒菌が共生関係を築く際に、植物の根の周り(根圏)に存在する微生物が果たす役割について研究しています。根粒菌は、マメ科植物の根に根粒を形成し、大気中の窒素を固定して宿主植物に供給することで、宿主植物の生育を促進します。今までは宿主植物と根粒菌の1:1の相互作用が研究されてきましたが、根圏に存在する微生物がこの共生を促進する可能性があることがわかってきました。窒素固定を通して土壌の劣化を抑制し、植物生育を促進できる根粒菌がより効果を発揮できるようになれば、作物の収量増加や土壌の肥沃化といったように食料不足の問題解決に1歩近づくと考えています。 生物資源学類では、農学に関する非常に幅広い分野について学ぶことができます。すでにやりたいことがある人も、まだやりたいことが漠然としている人も、新たな分野に出会うことができるかもしれません。ぜひ、積極的に様々な分野に触れて、自分の手で学んでいくことの楽しさを味わってください。社会経済学コース 松田 莉緒  世界には十分な食事をとれず飢餓に苦しむ方がたくさんいる一方で、食料を大量廃棄するフードロス問題が顕在します。この世の中のアンバランスさにいつしか疑問を抱いた私は、人々の意識や選択行動を変えることで、よりよい食の流通や豊かな食生活をもたらしたいと考え、生物資源学類の社会経済学コースに進学しました。 生物資源学類には4つの分野があるように、学生たちの志は様々で、会話を重ねるごとに新しい視点や刺激をもらうことができます。そのような環境下にいることで、「人助け」という視点で学習に励んできた私も、「地球への影響」というもう一つの課題も隣り合わせで考えていく必要があることに気づかされました。 私は現在、代替タンパク質の消費者選好分析をテーマに研究に取り組んでいます。世界的なタンパク質欠乏と、家畜が与える環境負荷が問題視されている今、人類が地球環境を守りながら、タンパク質という必要不可欠な栄養素を持続的に等しく摂取していくための鍵となるこのテーマは、環境と開発(栄養改善)の両者に貢献したかった私にとって非常に魅力的なものでした。 やる気はあるけど、やりたいことがわからない、そんな漠然とした思いを抱えている人もきっといると思います。私もその1人でした。筑波大学なら、生物資源学類なら、それが何だったのか、必ずわかるときが来ると思います。皆様が夢中になれるものに出会い、なりたい自分になれることを心から願っております。

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