富山大学 薬学部 2019年度学部案内
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富山流『くすりのスペシャリスト』である本学薬学部卒業生は、いずれもそれぞれの職場でその「研究者魂」をいかんなく発揮し、高い評価を受けて活躍しています。21環境と健康の接点を教育・研究する東京理科大学薬学部 教授 鍜冶 利幸(S58卒業・S60修士・S63博士) 私は東京理科大学薬学部で教員として働いています。教育と研究が私の仕事です。薬学をめぐる環境は、大きく変わりました。主に薬と向き合っていた薬剤師は、人と積極的に接することも強く求められるようになりました。薬学研究者も、臨床や病理にリンクした基礎研究を期待されています。 私の研究領域は、疾病予防と健康増進を目的とする衛生薬学です。薬による治療を直接の目的としない、異色な薬学です。私は、人の健康と環境の接点が生体分子と環境化学物質の相互作用にあるという視点から、時代の要請に応えるべく薬剤師養成教育と薬学研究を進めています。 富山大学薬学部の先生方は、研究にも教育にも非常に熱心です。伝統と言っていいでしょう。また、杉谷キャンパスでは、素晴らしい環境に、薬学・和漢研・医学・附属病院が併設されています。領域を超えた交流経験は今でも私の最大の財産です。自分の学生時代を折に触れて思い出しながら、研究室スタッフや学生と活発な日々を送っています。大学で学生と共に新薬開発を目指す岐阜薬科大学薬学部 教授 五十里 彰(H6卒業・H8修士・H11博士) 私は富山で生まれ育ち、富山医科薬科大学(現在の富山大学)で学位を取得後、静岡県立大学薬学部の教員になりました。薬学部に入学した頃は、薬剤師の道しか知らず、製薬企業、大学、研究所、行政機関など、多くの活躍の場があることを知って進路に迷うこともありましたが、熱心にご指導いただいた先生方の姿を見て、研究を続けたい思いと薬学教育に携わりたい思いが強くなり、大学教員としての道を選びました。 現在、私は岐阜薬科大学の生化学研究室で、がんの新しい治療標的の同定と治療薬の開発を目指して研究に取り組んでいます。大学では、すぐには役に立たないような基礎研究から医療現場に密着した臨床研究まで、幅広い研究を実施することが可能です。なかなか期待する結果が得られませんが、思いがけない発見に遭遇することがあります。このように探しているものとは別の価値あるものを見つける能力を“セレンディピティ”と呼びます。セレンディピティを高めるためには、幅広い知識と経験が必要なため、学生とともに日々勉強の毎日です。薬学を志す皆さんがこれからどのような職業を選ぶにしても、失敗を恐れず新しいことに挑戦し、多くの経験を積んで欲しいと思います。大学での研究活動による社会貢献および教育活動による人財育成高崎健康福祉大学薬学部 准教授 福地 守(H13卒業・H15修士・H18博士) 私は、富山医科薬科大学(現 富山大学)で学位を取得後、11年間富山大学薬学部の教員として勤務しました。現在は、高崎健康福祉大学薬学部で主に病態や薬物治療に関連した教育活動に従事するとともに、分子神経科学研究室を立ち上げ、これまでの経験を生かしながら新たな気持ちで研究に取り組んでいます。富山流「くすりのスペシャリスト」へのインタビュー 私の研究のテーマは、「神経系遺伝子発現の制御機構の解明および創薬への応用」です。記憶などの高次脳機能の発揮に必要なタンパク質の発現がどのように制御されるのかを明らかにし、得られた研究成果に基づいて、うつ病や認知症など近年患者数の増加が問題視されている神経・精神疾患の治療薬や予防薬開発を目指しています。また、これら研究活動を通した教育指導により、自ら考える力や高い志を持つ学生の育成にも取り組もうと日々努力をしています。 私自身、学生時代にはあまり感じませんでしたが、今になってみると大学生活は本当に短かったと痛感しています。ぜひ、「大学生の時にしかできないこと」や「富山大学でしかできないこと」を探して、在学中にできるだけチャレンジしてください!富山大学薬学部から多くの人財が輩出されることを祈っています。製薬企業で研究職として働く武田薬品工業株式会社 医薬研究本部 清水 久夫(H15卒業・H17修士・H20博士) 私は製薬企業で研究職として働いています。現在勤務している製薬企業では、画期的新薬を患者さんに届けるという共通の目標のもと、グローバル規模で新薬の研究開発に取り組んでいます。新薬の開発は、ターゲット探索、化学合成、薬効評価、毒性評価、薬物動態評価、製剤設計、そして臨床試験と多くの時間と労力がかかる非常に困難なミッションです。私はその中でも薬物動態を評価する研究に従事しており、現在、主に血中の薬物濃度を分析する仕事に携わっています。研究所では日々新しい候補化合物が見出されますが、候補化合物は低分子化合物から核酸・ペプチドなどの高分子化合物まで多岐に渡ります。さらに薬物本体のみならず代謝物やバイオマーカー等も高感度に分析することが求められます。私はそれら化合物の特性を見極めた分析法を開発することで、新薬の開発に貢献するやりがいを感じています。私は学部・大学院を通して富山大学で学びましたが、社会に出た現在、大学で得た専門知識や経験が自分の科学者としての重要な土台になっていると実感しています。製薬企業での創薬研究活動田辺三菱製薬株式会社 研究本部 加賀谷 賢太(H15卒業・H17修士) 私は、「医薬品の創製を通じて、世界の人々の健康に貢献します」との企業理念のもと、世界に通用する新薬を1日でも早く、1人でも多くの患者さんのもとへ届けるべく、研究開発に取り組んでいます。医薬品の創製は十数年の年月と莫大な研究開発費を要し、新薬は多くのステージを経て有効性と安全性が確認され、審査承認を経て発売されます。私はその中で薬理研究に従事しており、ミッションとしては標的分子探索と化合物最適化です。前者は文献や瀬踏み実験等から仮説を設定すると共に医療ニーズ等の情報を付与し狙うべきターゲットの選択を行います。後者は、標的分子の機序に基づき、細胞/組織等を用いるin vitro評価系、 病態モデル動物等を用いるin vivo 評価系で、化合物の作用を検証し新薬として磨き上げる仕事です。いずれもオリジナリティやスピード感、粘り強さが求められますが、非常にやりがいがある仕事です。
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